予備知識がないほうが驚きが大きい
――先ほどの「景清」のように、歌舞伎の知識がないと、何を描いているかわからないという状況が発生してしまうわけですね。
そう。しかも、眼が見えなくなった景清は、日向島に流されてしまう。そこへ、娘が訪ねてくる。みすぼらしい姿では、娘に父と名乗れない、景清の心の葛藤が泣けるんですね。だから、僕の講義では、浮世絵だけを紹介するのではなく、歌舞伎や落語、数学、当時の時代背景などをからめて浮世絵を読み解いていくようにしています。
――講義の参加者はどんな方が多いんですか?
僕の講座はリピーターが7~8割なので浮世絵にくわしい人は多いですね。もはやその辺の学者さんよりもくわしい人もたくさんいます。定員は30名ですがオーバーして40名くらいになることも多いです。
――何の知識もなく受講すると、レベルが高すぎて授業についていけなくなってしまいそうです……
いやいや、初心者でも全然問題ないです。なぜなら、毎回題材として話す内容は違うんですよ。というのも、今日みたいに講義ごとに僕が持ってくる浮世絵は違いますし、仮に同じ絵を持ってきても、その日の僕の気分で全く違う話になるので。 僕の講義では、基本的に「いつでも質問OK」なんです。仮に僕が話をしている最中でも、疑問があったらどんどん突っ込んでもらいます。実際、素朴な質問から話が展開していくので。
――何も知らない生徒さんはむしろウェルカムでしょうか?
そうですね。むしろ予備知識がなにもない人のほうが、素直な気持ちで授業を受けてもらえるのですごく喜んでもらえます。ゼロから学ぶことで、より浮世絵の世界の深さを知ってびっくりすると思います。
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2017年3月15日取材
文・写真/藤村はるな