指で触って楽しむ「江戸のインターネット」浮世絵

【Interview】新藤茂先生「浮世絵随談」@神奈川大学公開講座

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――なるほど、歌舞伎の知識がないと、全然誰なのかわからないですね。

歌舞伎の知識や時代背景を知っているだけで、いろいろイメージが浮かんできますよね。1枚の絵からいろんな情報が読み解ける。それが、浮世絵の魅力なんですよ。

「派手」OR「渋い」、どっちの浮世絵が高価?

――それにしても、なぜ同じ構図の絵を2枚持ってらっしゃるんですか?

左右ともに同じ構図ですが、色が全然違うでしょう? 見比べてみてください。ここでひとつ質問ですが、どちらのほうが高価だと思いますか?

――右のほうが色彩が落ち着いてるので、高そうな気がするんですが。左は色がピンクや緑で鮮やかなので、後世に作られたもの……という感じがします。

はずれです。左のほうが高価なんです。左のほうが保存状態は良くて、元の色に近い状態です。背景に使われている赤は、作られた当時は同じ色だったと思いますよ。右側は日に晒されたり、保存状態が悪かったりしたせいで、茶色っぽく退色してしまったんだと思います。どちらもおそらく何人もの所有者の手を経てきていると思うんですが、その間にこの浮世絵がどういう扱われ方をしてきたのかも、保存状態を見るとある程度わかる。それも、浮世絵蒐集のロマンのひとつなんですけどね。

――え、左のほうが元の色に近いんですか! 江戸時代の人の色合いというと、渋い色好みのイメージがあるんですが、江戸時代でもこうした派手な色合いが使われていたんですね

そうなんです。現代の日本人は色が落ち着いていて、ボロボロになったものを「渋い」って思いがちなので、みんな、左が偽物で右が本物なんじゃないかって思っちゃうんですけどね(笑)。

――なんとなく「色が落ち着いているのが粋」というイメージがありますよね。

でもね、昔の日本人は発色がいいものが好きだったんですよ。なんで「渋い色=日本っぽい」と現代人が思ってしまうかというと、保存状態があまりよくないものをよく見る機会が多いから、「当時の人はこういうのが好きだったんだな」と思い込んでしまっているんじゃないかと思います。多分、「渋い色が落ち着いていていい」というのは、明治時代の学者が言い出したんじゃないかと思うんですが。

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