指で触って楽しむ「江戸のインターネット」浮世絵

【Interview】新藤茂先生「浮世絵随談」@神奈川大学公開講座

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今の“粋”のイメージにだまされない

――背景を知らないで「渋い色がかっこいい!」「昔の日本人は渋い色が好きだった」と言うのは、けっこう恥ずかしいかもしれませんね。

ほかにも昔の日本人の色彩感覚を表すものとして、代表的な事例が、奈良時代に建立された奈良の薬師寺です。現在残っているものは東塔のみで、西塔は一度消失してしまっているんですね。その後、昭和56年に当時の色彩を再現して建てられたのが、いまある西塔。その色彩を見てみると鮮やかなグリーンの「青(あお)」や、お稲荷様の鳥居などに使われている鮮やかな赤色の「丹(に)」と呼ばれる色が多用されているんです。「青丹よし奈良の都は咲く花の…」ってね。

それから、仏像も本来は金ぴかだったものが、だんだん金箔が剥げたり、火事があって色が落ちたりした結果、多くの仏像がいまのように渋い風合いに落ち着いているんです。だから、保存状態の良い浮世絵を見ることで、当時の日本人の色彩感覚を学ぶこともできるんですよ。

これは野山から迷い込んだイノシシ……?

続いては、安政7(1860)年2月の「開港して間もない横浜」を描いた浮世絵を持ってきました。「大判錦絵三枚続」の大作です。これは、おそらく、横浜が開港してから一番早く描かれた浮世絵です。

横浜開港時

――うわぁ、こまごまと人が描かれていて、観ていて飽きないですね。

1枚の絵のなかに、すごく細かい情報が書き込まれていますよね。たとえば、この動物。なんだと思いますか?

横浜開港時

――なんでしょうか。野山から迷い込んできたイノシシ……ですかね?

一見イノシシみたいに見えますが、これは豚です。当時、日本では獣肉を食べることは禁止されてましたが、中国人は豚肉を食べてたんですよね。近くに中国人風の恰好をした人も描かれているでしょう? おそらく、これは中国人が飼ってた豚を描いたんだと思います。

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