竹宮惠子氏講演「問題作『風と木の詩』ついに連載まで」 

マンガはなぜ人を惹きつけるのか(その3)@明治大学リバティアカデミー

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『風と木の詩』を連載するために

自分の表現を求めるなかで、嫉妬など自分のあらゆる感情をマンガのネタにしていこうと思いました。マンガと自分は一蓮托生なのだと立ち向かう気持ち。できるだけ自分と近いものを描いていきたかった。アバターであるキャラを通して表現するのだから、恥じることはないわけです。むしろ自分の苦痛などをマンガで吐き出すことによって、昇華されるということもありました。

マンガで苦痛を吐き出すといっても、私はマンガに対する愛が深すぎて、自分の描く作品でさえ、自分の気持ちでドロドロにしたり、感情の餌食にしたりすることはできませんでした。結果として、それが自分自身と作品の両方を救うことになった気がします。

その頃、私は「風と木の詩」をなんとか連載したいという思いで、この作品を描ける自分に成長させたいと思っていました。読者アンケートで1位になったら「風と木の詩」を連載できると言われて意識して描いていたのが「ファラオの墓」です。担当編集者はまさか1位は取らないだろうと思って言っていたはずです。だって、それまでは16作品中、15位、16位が当たり前でしたから。

それまで私自身はファンレターに重きを置いていて、ファンレターでしっかりとした反応があれば、アンケート結果は気にしないというスタンスでした。でも、「1位を取る」という条件をつくってもらったおかげで、それに向かって邁進することに決めました。こんな少年マンガのような作品で人気を取れると思っているところが、私の能天気なところでもあるわけですが(笑)

当時、オイルショックの影響でカラーページの紙がグラビア用の紙になりました。ちょうどその頃に始まったのが「ファラオの墓」。グラビアページでカラーを描くのは少年誌では当たり前のことでした。私のマンガは少女マンガらしい繊細さはあまりなく、むしろ少年マンガっぽい。グラビアページでカラーを描くのはむしろ向いていました。物語性についても少年マンガ風の方が好き。そういう意味でも「ファラオの墓」を描かせてもらえてよかった。自分のよさを出せたと思います。

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