竹宮惠子氏講演「問題作『風と木の詩』ついに連載まで」 

マンガはなぜ人を惹きつけるのか(その3)@明治大学リバティアカデミー

  • 公開 :

コマが自分の呼吸を表すようになる

自分だけの表現をするというのは、口で言うのは簡単ですが、よっぽど独自のテーマを持っているならともかく、同じような読者層に向けて作品を描いているマンガ家のなかで、自分の表現を追求するというのは、新人にとってとても難しいことでした。

当時はよくわかっていませんでしたが、今はこう断言することができます。自分の表現を求めるというのは、つまり、自分のアバターを創造することなのです。

キャラクターというのは自分の代弁者。そして彼は物語世界の住人であり、そこに生きている存在です。

それまでは、コマというのは物語を進めるためにあると思っていましたが、「キャラクター=自分の代弁者」と意識するようになってからは、コマが自分の呼吸を表す非常に重要なものだとわかってきました。自分の言いたいことをいうためにここでアップをいれるかいれないか。一コマずつが貴重で、決して失敗できないものになっていきました。

なんとか理想的な形におさめたいと追い求めるようになって、全てのコマが必要な振る舞い方をするようになるまでは、とにかく試行錯誤。週刊連載で年間約1000ページを3年くらいこなすと、ようやく自分のスタイルが定まってきたように思います。

私に限らずマンガ家は、若いときに描いた習作を、のちにきちんとしたマンガに仕立てることがよくありますが、昔に描いた習作と、のちに描き直したものを見比べると、このコマの使い方の違いがよくわかります。

1 2 3 4

-健康・スポーツ, 自己啓発, 講座レポート
-, ,

関連記事