「学びと私」コンテスト 10月はこんな作文が集まっています![4]

10月の一次審査通過作文/「学びと私」作文コンテスト

10月31日が締め切りの第3回「学びと私」作文コンテスト。1次審査を通過して第3回金賞候補作になった作文のうち一部をここで紹介します。

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学びと私コンテスト

10月31日が締め切りの第3回「学びと私」作文コンテスト。1次審査を通過して第3回金賞候補作になった作文のうち一部をここで紹介します。

学びは必ず役に立つ

 何歳になっても、人は学ぶことができる。むしろ一生涯、学びの連続ではないだろうか。

 私は法学部の出身だが、当時学んだことはいつになっても、役に立っていることはがほとんどだ。数ある中でも、政治学の講義は毎回興味深く聴講していた。ある時課題に出されたレポートが特に印象に残っている。

 「自分の両親の支持政党を明記し、それについてどのような政治思想の影響を受けているかを述べよ」という課題だった。父からは、プライバシーの侵害だと苦情も言われた。しかし左翼思想が割合多い大学教員に対し、右翼思想の強い父のことをレポートに書く方が、よほど目に留まって面白いのではないかと思ってペンを走らせていたのだ。一瞬、何かの調査目的なのかと疑りたくもなったが、そこは疑念を呑み込み、清々しいまでに左翼思想とは真逆の父の思想について述べたことを思い出す。

 政治思想については、両親が政治に多少なりとも関心を寄せていれば、その影響は少なからず受けるものだ。私も父ほど傾倒はしていないが、右翼思想は根幹にあると自覚している。

 今秋の衆議院議員選挙については、一度その色眼鏡を外してみることにした。最近の政局を鑑みると、単純に支持政党に投票するというのも安易な気がしてならないからだ。癒着による不正、不倫問題、軽率な発言、政党内の分裂など、選挙前から問題は山積していた。一体今の政治はどこへ向かうのだろうか。

 毎日のように政見放送や新聞から、各党の選挙公約や出張を見聞きするが、どうも野党の中でも中道の政党ほど、何を訴えたいのか、これから何をしたいのか、主張がぼやけて見えた。だからと言って、数年前に話題となった「積極的棄権」という行為には走るまいとした。あたかも堂々と、白票を入れることが正義のように謳っていたが、これは大きな間違いであると解しているからだ。

 実際の投票に関しては差し控えるが、今回の選挙は中道の政党ほど議席を減らした。体の良い理想ばかりを掲げても、有権者はもはやお見通しだ。

 今回の選挙を通して、あの時の課題レポートのことが思い出された。講義担当の先生は、両親の支持政党を書かせることにより、そこを政治への関心の入口としたかったのだ。積極的棄権などせず、メディアの情報も鵜呑みにせず、自身の目で正しい判断をするべきである。選挙権を持った今、課題レポートの意図が痛い程よくわかる。政局が動く度に思い出すレポート。忘れられない貴重な講義内容だ。

KEIさん(36歳)/宮城県

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「世界平和の方程式を学んだあの日から」

 自分は今、酷く不安定な世界で生きているという思いがじわじわと侵食し始めたのは小学校の頃だと思う。ツインタワーに飛行機が突っ込んだからだ。中学、高校、大学と時間が過ぎていくにつれ、焦燥感は強くなっていった。中学時に旅行に行った、戦時下のパキスタン。アメリカに移住し、初めて目の当たりにしたイスラム教徒への感情。オサマ・ビンラディンが殺された時にはクラスメートたちが笑いながら彼の写真を的にダーツをしていた。1%の裕福層に怒りを示して大学を占拠するアメリカ人。隣町に立った慰安婦像。搾取され続ける世界の貧困層。移民問題で荒れる欧州。今ではISISにポピュリズム。北朝鮮のミサイルにイギリスのEU離脱。人種間の対立で起こる暴動やテロもニュースに上がり、自分の回りでも歪みを感じることが多くなった。電車の中でプラカードを持った人などを目にする度、じわじわと不安が込み上げてくる。

 「今日はリカード理論をやりましょう」

  ペルシャ出身のおじいちゃん教授が経済学の基礎講義で説明してくれた経済理論。AとBの国がそれぞれ二つの製品、例えば衣服と穀物を作るとする。両者の中でどちらかといえば衣服の生産が得意なAが衣服だけを、どちらかといえば穀物の生産が得意なBが穀物だけを生産し、その後貿易でお互いの製品を交換すれば、両者の生産性が上がり、一国では生み出せない量の製品を手にすることができるという、グラフ上にたった二本線を引くだけで語ることができるシンプルな理論だ。

 「私にはこれが、世界平和の方程式に見えます」

  ホワイトボードを眺めながらポツリと呟いた教授の言葉に、私はノートを取っていた手を止めてグラフを見つめた。そして気付いた。物質的豊かさを最大にするには各国が自分が得意なことに専念し、他国と協力する必要がある。自分たちの豊かさが他国にも委ねられているのなら、他国を攻撃することはそう簡単ではない。グローバル化された今の世界がその証拠だ。第一次、第二次世界大戦のように他国に火の雨を降らせることはそうそうできない。そうすることによって打撃を受けるのはその国だけではなく、そこと貿易をするたくさんの国もだからだ。勿論、現実にはもっとたくさんの思惑が絡んでいるが、ただシンプルに考えれば物質的豊かさの最大化は幸福の最大化に繋がる。

  それまで私の中で世界平和は愛と繋がっていた。しかし教授の一言でそうではないのかもしれないと初めて思った。細かな思惑を排除するか、よりよい利益を与えることで各国の繋がりをシンプル化すれば、リカード理論を使った幸福最大化の方程式がデザインできるのではないだろうか。できあがった幸福の原点が愛であろうと合理主義であろうと、世界中の人が笑っていられるのならば、肩を組んでいられるのであれば、関係ないはずだ。いや、愛という曖昧な概念より合理主義の方が持続可能性は高いかもしれない。

  この発見の直後、私は専攻をビジネスから国際ビジネスに絞った。さらに発展途上国中心に勉強をし、物質的豊かさの最大化に取り残されている国の原因を探った。今は世界を一瞬にして繋ぐことができ、国境がないITという文明の利器を使ったデジタルマーケティングを学ぶ為に大学院に通っている。ここ数年間、私を突き動かしてきたのは教授のあの小さな呟きだ。

  大学後半から大学院にかけて「何を目指しているの?」と質問されることが増えた。私の答えを聞いて、大抵の人は笑う。しかし私は幸福の方程式の欠片を学んでしまった。だから聞かれる度に堂々と胸を張ってこう答えるのだ。「私は世界平和を目指している」と。

八八七さん(23歳)/埼玉県

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念願の学び

 独学で童話を書き始めてから、かれこれもう八年。とはいえ、その間に二人子どもを産み育て、その中で書くことができる物語といえば、原稿用紙五枚程度のありがちな物語をなぞったようなちょっとしたお遊びだったかもしれない。それでも、少しの間だけでも空想の世界に浸って、羽を伸ばしながら書くという作業は私にとって貴重なひとときであり、現実逃避しながら夢をおいかける至福のときであった。
 童話賞や公募を見つけては応募もしつづけた。賞をいただいたり、雑誌に掲載されたときはとてもうれしかった。でも、なかなか望むような結果は出ない日々。また書けば書くほど、どこをどう直せばもっと面白くなるのか、よくなるのかわからず、孤独な作業ゆえ悶々とすることもあった。
 それでも、ペンを置くことはなかった。やっぱり書くことが好き。頭に浮かんだとっておきのストーリーならなおのこと、書かずにはいられない。
 そんな折、童話講座の存在を知った。よしっ、子どもたちが幼稚園に通うようになったら、まっさきにいこう!そう思って、それを励みに、ひとりもくもくとお話を書き続けた。
 その念願のときが、今年の四月ようやく訪れた。次女も幼稚園に通うようになり、まとまった自分の時間が持てるようになったのだ。それまで娘たちの昼寝の時間を利用してペンを握っていた私に、本格的に集中して作品をつくる機会が訪れたのである。
 さっそく、お知らせを見かけるたびに行きたくてうずうずしていた、カルチャーセンターにて開催されている童話講座の見学を申し込んだ。子どもが離れたらまずやりたいことリストの一番最初の項目を、迷わず実践に移したのだ。
 講座の内容は、持ちあった作品を受講生ひとりひとりが読み上げたあとで、他の受講生たち及び、講師の先生から講評を受けるというもの。年齢も性別もばらばらだけど、みんな、真剣そのものだ。積極的に意見が交わされ、濃くて充実した一時間半。あっという間に終わった。
 その晩、私は興奮して眠れなかった。私だったら他の受講生の作品をどう直すだろうか、次回どの作品を持って行こうかと、あれこれ考え続けた。
 二週間後、私は書き溜めておいた中でも一番の自信作を持っていき、緊張気味に発表した。原稿用紙十枚分読み上げたのち、喉はからからになってしまった。そのときの周りの反応は、なかなかおもしろい。ほっと、私はひと安心した。でも、みんなから温かい言葉をいただいたのは最初だけで、近頃では手厳しい意見もバシバシいただいている。ありがたいことだ。
先生のアドバイスはいつも的確で、同じ志をもつ人たちの作品に触れるというのも、とても刺激的で参考になる。まるで大学のゼミを彷彿とさせて、青春時代に遡ったような面持ちである。
 このときばかりは子どものことをしばし忘れ、主婦であることも脇に置いといて、瞳を輝かせながら自分が好きなことに没頭している。限られた時間で、目的がはっきりしているからこそ、学生のときよりももっと学ぶのが楽しい。講座の余韻を残して、家に帰る私の足取りは毎回軽い。
 せっせと自転車を漕いで子どもをお迎えに向かう私は、前より明るく元気はつらつとしたママになってきたような気がする。おかげで、子育てにも余裕がでてきた。
 さて、いまの目標は、自分が書いた作品を本として出版すること。そして、子どもたちの心の琴線に少しでも触れることができたらいいなと思っている。
 そのために、仲間たちと励まし励まされながら、これからも筆力のみならず自分自身をもしっかり磨いていきたい。

サニーふうさん(37歳)/東京都

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第3回「学びと私」コンテスト1次審査通過作文をチェック!
10月はこんな作文が集まりました![1]
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10月はこんな作文が集まりました![3]

過去の「学びと私」コンテストの金賞作品はこちらから
9月(第2回)の金賞3本が決定しました
8月(第1回)の金賞3本が決定しました

第2回「学びと私」コンテスト1次審査通過作文をチェック!
9月はこんな作文が集まりました![1]
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