サラシア、フラバン、黒生姜。肥満マウスに効いたものは?

油田正樹先生の「知っておきたい漢方いろは」その7@武蔵野大学

武蔵野大学公開講座「知っておきたい漢方いろは」は、薬学のスペシャリストの先生が漢方薬にかぎらず、身の回りの健康の知識を教えてくれる有益な講座だ。今回は肥満に効く生薬の基礎研究という、薬学専攻でなければめったに聞けない話だった。

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武蔵野大学公開講座「知っておきたい漢方いろは」は、薬学のスペシャリストの先生が漢方薬にかぎらず、身の回りの健康の知識を教えてくれる有益な講座だ。今回は肥満に効く生薬の基礎研究という、薬学専攻でなければめったに聞けない話だった。

肥満に効く生薬の基礎研究について公開講座で聞けるとは

「これがサラシアを与えたマウスのCTスキャンです。ほら、内臓脂肪が落ちているでしょう」

まさか大学の公開講座で、肥満に効く植物成分の話が効けるとは思わなかった。武蔵野大学三鷹サテライト教室での話だ。講師は、この春まで同大薬学部教授としてさまざまな漢方薬や生薬の研究を行ってきた油田正樹先生。漢方製剤で知られる(株)ツムラで常務取締役研究本部長を務めた人物だ。先生は長年、肥満に効く生薬を研究してきた。

「今日は私が基礎研究として行った、サラシア、フラバンジェノール、黒生姜がどう肥満に効いたかの実験結果についてお話します」(油田先生。以下「 」内同)

サラシアをマウスに飲ませると……

サラシアとは、主にスリランカやインドなどの東南アジア諸国に産するニシキギ目ニシキギ科サラシア属のつる性植物で、南アジアの伝統医学として知られるアーユルヴェーダで使われてきた。糖尿病の治療に根や幹が有効であると言われ、皮膚病や淋病、リウマチの治療に根が使われてきた。なお、コタラヒム(Kothalahimbutu)とは、サラシアの現地での呼び名である。下が、サラシアを摂取させたマウスのCTスキャン画像だ。

コタラヒム(サラシア)の場合

右欄のTSODマウスとは、遺伝子操作ではなく交配によって作り出されたメタボリック・マウスだ。肥満や糖尿病などのモデルに使われる。左欄のTSNOマウスは、同一の祖先をもつがそのようなメタボ症状のない、通常のマウスである。黄色は皮下脂肪、ピンクは内臓脂肪を表す。

左欄のTSNOマウスと右欄の一番左のTSOD(メタボ・マウス)マウスを比べると、皮下脂肪も内臓脂肪も、TSODマウスがたっぷり蓄えているのがわかる。このメタボ・マウスにサラシアを与えたのが、右欄の右2つの画像(サラシア1%、サラシア3%)である。皮下脂肪・内臓脂肪ともにかなり減っていることがわかる。

フラバンジェノールをマウスに飲ませると……

次はフラバンジェノール®だ。

フラバンジェノール®とは、フランス南西部ランド地方の松の樹皮から抽出されたものだ。主成分はポリフェノールで、とくにオリゴメリックプロアントシアニジン(OPC)が多く含まれることで知られる。これについても、油田先生は実験したという。

一番左側が肥満していないマウスにMF(通常飼料)を与えたもの、左から2番目より右側のTSODがメタボリック・マウスでHFは高脂肪飼料を与えたものだ。

一番右側がフラバンジェノール®5%を与えたマウス、その左が3%を与えたマウスだ。成分の含有率が高い方が内臓脂肪が減っていることがわかる。

黒生姜を与えたマウスは……

油田先生が最も力を入れて研究したのが、黒生姜だという。黒生姜とは、タイやラオスなどの熱帯地方に自生しているショウガ科バンウコン属の植物で、タイ語では「クラチャイダム(Krachai-dam)」という。油田先生は、まだ黒生姜が注目される前に、ラオスの市場で大量に入手し、その脂肪抑制効果を研究してきた。

黒生姜は現地では古くから血流の改善などに利用されてきた伝統生薬だという。滋養強壮や血糖値の低減に効果があるとされ、最近では抗菌・抗ウイルス作用があるという報告も出ている。その脂肪抑制効果を示すものが次の図だ。

これも左側が肥満していないマウス、右3つがメタボリック・マウスのCTスキャン画像である。用量を増やすほどメタボリック・マウスの内臓脂肪量が減っていっていることがわかる。また、黒生姜は耐糖能異常(糖尿病予備軍)および高インスリン血症を改善するという結果が出たという。ちなみに肥満していないマウスには黒生姜の影響は見られなかった。

さらに葛の花のエキスも……

最後に、葛の花のエキスについても触れられた。葛はその根が葛根湯の原料になる。今まで根以外は食用にならないと思っていたが、その花にも効能があるという。

葛の花は、酒の毒を消す作用があり、二日酔いの治療や予防に使われる。また、糖・脂質異常などの代謝性疾患に対しても予防作用を示すという。これに関連する作用メカニズムとして、脂肪を燃焼させる褐色脂肪細胞の熱産生促進作用があることが関連すると思われる。

脂肪に影響を与える数々の生薬から今後も目が離せない。

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◆取材講座:「知っておきたい漢方いろは」(武蔵野大学公開講座・三鷹サテライト教室)

文/まなナビ編集室 写真/(c)F_studio / fotolia

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