100歳時代に1つのキャリアだけは退屈。学びが投資になる時代に

長寿時代の人生戦略3

2007年に日本に生まれた子どもの50%は107歳まで生きる──〈100歳時代〉を生き抜くための人生戦略本、『LIFE SHIFT(ライフ・シフト)』(東洋経済新報社)。ベストセラーとなった同書が勧めるのは学び続ける人生。新しい時代の学びとは。(前の記事「100歳時代の資産形成に必須の《自己効力感》《自己主体感》とは何か」「あなたは100歳時代を生きぬく3つの無形資産を持っているか?」)

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100歳時代には引退後も新たなことにチャレンジする人生に。(c)Mediteraneo/Fotolia

2007年に日本に生まれた子どもの50%は107歳まで生きる──〈100歳時代〉を生き抜くための人生戦略本、『LIFE SHIFT(ライフ・シフト)』(東洋経済新報社)。ベストセラーとなった同書が勧めるのは学び続ける人生。新しい時代の学びとは。(前の記事「100歳時代の資産形成に必須の《自己効力感》《自己主体感》とは何か」「あなたは100歳時代を生きぬく3つの無形資産を持っているか?」)

「教育」→「仕事」→「引退」 「仕事」を長引かせるのは退屈

著者の一人で、ロンドン・ビジネススクール教授のリンダ・グラットン氏は、安倍政権の「100年時代構想会議」の有識者議員も務める、人材論・組織論の世界的権威だ。グラットン氏は「寿命100年時代は、仕事にもプライベートにも、これまで以上に可能性がある」と語っている。(リンダ・グラットン×糸井重里「寿命100年時代をどう生きる?」対談)。

そうした可能性を伸ばしていくのが、新しい時代の学びだ。

生まれた子どもの50%が107歳まで生きる時代に何が変わるのか? 1つには、人生の「ステージ」が変わると著者は言う。

20世紀は、人生を3つのステージにわける考え方が一般的だった。「教育」のステージ、「仕事」のステージ、そして「引退」のステージだ。

しかし100年生きる長寿社会において、この3ステージの生き方を機能させようとすると、2つ目の「仕事」のステージを長くするしかないだろう。しかし、それではあまりに長く働くことになって心身ともに消耗するし、何より退屈だと本書は提言する。

そこで新しく登場するのが「マルチ・ステージ」という生き方だ。

生涯に2つ、あるいは3つキャリアを持つ時代に

たとえば、生涯に2つ、あるいは3つのキャリアを持つ。金銭面を重視して長時間労働を行うステージもあれば、家庭を優先させるステージがあってもいいだろう。旅行をして見聞を広げるステージもあるだろうし、ボランティアや社会貢献を軸に生活を組み立てるステージがあってもいい。子育て後の人生が長くなれば、年齢を重ねてからの教育や起業の機会も増えるはずだ。

3ステージ時代は、教育→仕事→引退という順番で、多くの人が同じ道を、いわば、“一斉行進”していた。マルチ・ステージ時代は、一人ひとりが、自分が歩みたい道を選択し、オリジナルな道を歩んでいくことになる。

新しいステージを切りひらくための「投資」こそが「学び」

マルチ・ステージ人生を生きるために必要なもの。それは、変身のためのスキルだ。

具体的に挙げれば、新しい環境へ移行するための知識であり、新しい思考様式を模索し、受け入れるための柔軟性であり、ときには古い友人を手放して新しい人的ネットワークを築く必要があるとも本書は言う。詳しくは本書をお読みいただきたいが、では、こうしたスキルを身につけるために、前提として何が必要になるかといえば、自分への「投資」である。

3ステージ時代、投資はもっぱら、人生の初期、「教育」の時期に集中して実施されてきた。小学校から高校、または大学までの間に、多くの人は学び、そして、学び終えていた。

しかし、人生がマルチ・ステージ化しようとする今、私たちは生涯にわたって、学び=投資を続ける必要がある。新しい投資が、新しいステージを切りひらくための、燃料となるからだ。

年齢を重ねても「脳は鍛えられる」

とはいえ、年齢を重ねてからも、若いときと同じように学べるのだろうか? と不安を感じる人もいるかもしれない。その疑問への明快な答えも必読だ。

本書には、年齢を重ねるにつれて脳機能は衰えるという従来の見解を覆す、新しい科学界の考え方が紹介されている。筋肉を鍛えるように、脳を繰り返し使用して訓練を積めば、機能を高めたり、ダメージからの回復を後押ししたりできるというのだ。逆に、使わなければ、脳は次第に衰えていく

脳に好ましい影響を及ぼす方法についての研究は始まったところだが、とにかく、「脳は鍛えられる」。だから私たちは安心して、いくつからでも学び始めることができるし、新しい学びによって、いくつからでも、新しい人生のステージへと移行することができるのだ。

自分をバージョンアップしたい人に、本書はたくさんの気付きとヒントを与えてくれる。

文/砂田明子 写真/(c)Syda Productions / fotolia

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