女性はイライラしやすいようにできている
「女性の方が男性より、些細なことでイラッとしやすいんです。人間はストレスを感じると“コルチゾール”というホルモンが分泌されます。このストレスホルモンは、男性より女性のほうが頻繁に分泌することがさまざまな研究で明らかになっているんですよ」(杉山先生。以下「 」内同)
冒頭の一言に、女性が大半を占める受講生の間にぴーんと緊張感が走る。ここは神奈川大学の公開講座「大人の人間関係論」。雑誌やテレビなどメディアにも引っ張りだこの人気心理学者、神奈川大学人間科学部教授の杉山崇先生が、人間関係に悩める大人に、心理学という処方箋をくれる場所だ。
「狩猟採集時代にさかのぼると、狩りを担当していた男性はチームで助け合わないといけなかった。命を賭けた行動なので、仲間割れとかしている場合じゃないんですね。だから男性は、いったん人間関係とか上下関係を決めたらそれが固定化して、それ以上どうこうしようという気持ちにあまりならないんです。意外にも社会的ランキングの更新に積極的ではないんですね。
ところが女性は、居を構え社会を作る立場。女性の方が、社会的に低いポジションになると生存も生殖も不利になってしまうんです。だから隙あらば社会的ランキングを上げようとする。ランキング更新の本能的な動機が男性よりも強いのです」
確かに、一部の女性は最終的に玉の輿に乗れば勝ち組だと思っている節もある。車を乗り変えるようにパートナーを変えたり、“後妻業”という言葉が成立するのもそのためだ。いい職を得るには努力も時間も要るが、恋に落ちる(相手を落とす)のは一瞬。男性に比べてちょっとしたことでランキングが上下しやすいことを意識下で察知している。
杉山先生によれば、女性は些細なことでも自分が“下”に扱われたように感じると、イラッとするという。職場で、私だけお菓子が配られなかった、とか、私だけ「おはよう」と言われないなどとグチる女性がよくいる。今までは、傷つきやすいんだろな、とか、負けず嫌いなのかな、などと思っていたが、格下に扱われた気がしてイラついていたのだ。
女性のマウンティングは、頻繁に、さりげなく
少しでも相手より格上になろうとして取る行動が、“マウンティング”だ。ここ数年、沢尻エリカ主演のドラマ『ファーストクラス』(2014年、フジテレビ系)でマウンティング女子が取り上げられるなど、“マウンティング”は社会現象にもなっている。
「マウンティングとは、動物行動学からきた言葉で、もともとボスザルが、格下のオス猿の上にまたがって(マウントポジションをとって)、自分が相手より格上だということをアピールすることを指しています。人間の場合は、他人に屈辱を与え、劣等感を植えつけ、優越感に浸る行為をいいます。この時に用いられるのは、腕力ではなく、態度や言葉です」
社会的ランキングの更新に余念のない女性社会では、マウンティングも日常的に行われる。しかもそれはキャットファイトのようなあからさまないがみ合いではない。笑顔のまま、さりげなく、相手をこきおろす。そんな高度なスキルをマウンティング女子は身につけているという。たわいもないいざこざだろうと甘く見てはいけない。新入女子社員の教育係に任命されたお局様が、マウンティングをエスカレートさせすぎて、新人が会社をやめるほど追い詰められたケースもあるという。
しかし、あまりに頻繁に起こるので、もはや女性同士では耐性ができていることも多いというから、上司たるもの、女性部下のマウンティングが行き過ぎかどうか判断するのにもスキルが必要なようだ。
女子よりタチの悪い“マウンティング男子”
では男性には“マウンティング”はないのだろうか。
「先ほど紹介したように、マウンティングを頻繁にすると組織だった行動ができなくなるので、男性社会ではマウンティングが起こること自体が女性より圧倒的に少ないのです。
ただ一度起こったらそれこそ大変。相手を恨み、殲滅するまで止まらなくなります。たとえば会社内○○専務派とか△△常務派と分かれてマウンティングが始まると、どちらかが実権を握ると対立していた方は会社を去るところまで追いやられてしまう。男性のマウンティングは女性よりタチが悪いと言えるでしょう」
どうやら男性の場合は、本家本元の動物のマウンティングまで行き着くようだ。それこそ、格下のオス猿の上にまたがって、自分がボスだとアピールするまで止めないのだろう。
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文/まなナビ編集室 写真/まなナビ編集室、(c)Y’s harmony / fotolia