初期の認知症が疑われるのは次のうちどれでしょう?

【連載】認知症、ならないために:早期発見編 その5

Q 次のうち、初期の認知症が疑われるのはどれでしょう?

a まわりの人のすることや話すことを異常に気にしはじめる
b まわりの人への関心が薄くなる
c 人と話していて、話が食い違うことが増える

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Q 次のうち、初期の認知症が疑われるのはどれでしょう?

a まわりの人のすることや話すことを異常に気にしはじめる
b まわりの人への関心が薄くなる
c 人と話していて、話が食い違うことが増える

認知症というと、もの忘れが増え、新しいことを覚えられない記憶障害というイメージが強いと思います。たしかに記憶障害も大きいのですが、近年の「社会脳科学」から、認知症では「社会的認知の障がい」も重要だと考えられるようになってきました。

「社会的認知」というと、社会的に認められているとか、世間に広く知られているという認識がメジャーかもしれません。しかし医学的には別の意味があり、「社会や、そのなかで生きている人々の情報をキャッチして理解すること」という意味になります。

具体的には、こんなことです。

・人の目つきや表情などを見てその人の気持ちを推測すること
・他人の心の痛みを感じてそれに共感、同情すること
・相手の気持ちを推し量りながら自分の行動をコントロールすること
・他の人と協力し、物事を行うこと
・自分の感情や欲望を適切に抑制すること
・自分を振り返り、反省すること

たとえば、目の前で子どもが泣いていても、どうして泣いているのかわからない。「かわいそうに。どうしたんだろう?」という感情もわいてきません。ですから、特に何もせず通り過ぎようとします。

早期発見5

このように社会的認知機能が低下すると、身の回りへの関心も低下し、その結果、他人への配慮や気づかいといったことができなくなります。他人の目が気にならなくなるので、傍目には「わがまま」で「自分勝手」に見える言動も増えてきます。

会話中にも微妙なズレが出てきます。相手の表情や気持ちが読み取れないうえ、相手の話に集中できないことから、話す内容が食い違ってしまうのです。答えはbとcです。

身の回りの人に、会話中に「あれ?」と思う返答が増えたり、自分勝手に見える言動が増えてきたなと思ったら、注意してあげてください。

(ひとくちメモ)◎世界の認知症患者数
国際アルツハイマー病協会が2015年に発表したデータによると、2015年時点で推定される世界の認知症人口は4680万人。新たに認知症と診断された人は世界で約1000万人。そのうち日本を含むアジアが490万人で、約半数を占めています。

(「認知症、ならないために」は毎週日曜16:00更新予定)

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■監修■伊古田俊夫
いこた・としお 1949年生まれ。1975年北海道大学医学部卒。勤医協中央病院名誉院長。脳科学の立場から認知症を研究する。日本脳神経外科学会専門医、認知症サポート医として認知症予防、認知症の地域支援体制づくりに取り組んでいる。著書に『40歳からの「認知症予防」入門』(講談社)など。

[伊古田先生からのメッセージ]→「認知症予防とは、認知症を『先送り』することです」
認知症を「予防する」ということは、「一生、認知症にならない」ということではありません。認知症の原因は、今もわかっていないからです。確かなことは脳の老化だということ。ですから認知症を100%予防することはできませんが、発症する年を「遅らせる」ことはできます。いわば認知症の先送り。これが予防策をみなさんに広く知ってもらいたいと願う理由です。

文/佐藤恵菜 イラスト/みやしたゆみ

-健康・スポーツ, 教養その他
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