軽度認知症と言われてもあきらめないで。認知症が進行しない人の割合は?

認知症、ならないために

Q MCI(軽度認知障害)になっても認知症にならず、正常な状態に戻る人もいます。その割合は、次のどれが近いでしょう?

A 10%
B 20%
C 30%

  • 公開 :

Q MCI(軽度認知障害)になっても認知症にならず、正常な状態に戻る人もいます。その割合は、次のどれが近いでしょう?

A 10%
B 20%
C 30%

認知症の人の多くは、いきなり認知機能が下がって認知症になるわけではありません。多くはずいぶん前からMCI(軽度認知障害)の状態で過ごし、その間少しずつ認知機能が落ち続け、生活に支障が出るレベルまで進行してしまうのです。

しかしMCIの段階で適切な対応を取れば、認知症に進行せず、正常な認知機能に回復する人も少なくありません。ある研究では、MCIと診断された高齢者を20カ月後に再検査したところ、4人に1人が健常レベルに戻っていました。これらの研究からMCIの人の約20%が正常な状態に戻ると考えられます。

答えはBです。

MCIと診断された後、認知症に進行した人を「コンバーター」と呼びますが、このように正常レベルに戻った人を「リバーター」と呼びます。MCIになっても認知症になるとはかぎらないことを知っておいてください。

リバーターに回復するためには、MCIのなるべく早い段階で運動や認知トレーニングなどを通して、認知機能をリハビリしていくことが重要です。

早期の対策を

筑波大学付属病院でMCIの人を対象にした「認知力アップデイケア」では、作業療法士や看護師、臨床心理士などのスタッフとともに、スポーツや音楽活動、ダンス、認知ゲームなどのプログラムを提供しています。このデイケアに参加した人と、参加しなかった人の認知機能を1年半後に比較したところ、参加した人の方は認知機能が上がっていました。このことからもMCI段階でのケアがいかに重要か、わかります。

たとえMCIと診断されても落ち込むことはありません。適切な対策を講じることで、認知症を遠ざけることができます。あきらめないでください。

認知機能の低下が見られるものの病的ではない、グレーゾーンの状態であるMCI。認知症は防げないといわれてきましたが、MCIの段階で正しく対処すれば、認知症へ進行するのを防げる可能性があります。当シリーズではMCIを見逃さないための知識、認知症の予防策をご紹介していきます。

〔あわせて読みたい〕
ウォーキング続けられない人のための認知症予防体操
アルツハイマー。脳に病変が現れて発症までに20年
認知症予防に効果的なのはウォーキング?筋トレ?

■監修■朝田隆(東京医科歯科大学脳統合機能研究センター認知症研究部門特任教授/メモリークリニックお茶の水理事長)
あさだ・たかし 1955年生まれ。東京医科歯科大学医学部卒業。同大学神経科精神科、山梨医科大精神神経科、国立精神神経センター武蔵野病院精神科、筑波大学精神医学教授などを経て現職。認知症の早期診断法や予防、リハビリに携わり、MCIの啓蒙活動を積極的に行っている。

文/佐藤恵菜 イラスト/みやしたゆみ

-健康・スポーツ
-, , ,

関連記事