Q 座っている時間が長いと、認知機能が低下しやすくなります。では、1日に14時間以上座っている高齢者の認知機能の低下リスクは、13時間以下の人と比べて、どれくらい高くなるでしょう?
A 約3倍
B 約2倍
C 約1.5倍
座っている時間の長さと認知機能の関係を調べた研究があります。それによると1日14.3時間以上座っている高齢者は、13時間以下の高齢者と比べて、認知機能が低下するリスクが約2倍になっていました。
答えはBです。
イスに座っている時間が長い人ほど寿命が短くなるというデータもあります。たとえば1日11時間以上イスに座っている人は、たとえ運動量が多くても、寿命が短くなる傾向が見られます。運動量が少なければ、さらに短くなります。
座っている時間といえば、デスクワークの人は座っている時間がずいぶん長いのではないでしょうか? まだ若いと思っていても、MCI(軽度認知障害)は40歳代から始まると考えられます。座る時間の長い人は要注意です。
なぜ長時間座っていることが寿命を縮め、認知機能を低下させるのでしょうか。
東京医科歯科大学脳統合機能研究センター認知症研究部門特任教授の朝田隆先生は、理由は運動不足だけではなさそうだといいます。中性脂肪を分解する酵素活性が低下したり、インスリンの働きが悪くなって血管の状態が悪くなったりすることが、認知機能を低下させるのではないかと考えられています。
さあ、イスから立ち上がりましょう。立ち上がったらすぐできる体幹トレーニングをご紹介します。
体幹は体の中心。正しい姿勢を保つためにも重要です。体幹がしっかりしていると体のバランスがとりやすくなるので、歩くのも立つのもスムーズになり、転倒もしにくくなります。体全体の動きが活性化するので生活習慣病の改善にも役立ちます。
認知機能の低下が見られるものの病的ではない、グレーゾーンの状態であるMCI。認知症は防げないといわれてきましたが、MCIの段階で正しく対処すれば、認知症へ進行するのを防げる可能性があります。 |
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あさだ・たかし 1955年生まれ。東京医科歯科大学医学部卒業。同大学神経科精神科、山梨医科大精神神経科、国立精神神経センター武蔵野病院精神科、筑波大学精神医学教授などを経て現職。認知症の早期診断法や予防、リハビリに携わり、MCIの啓蒙活動を積極的に行っている。
文/佐藤恵菜 イラスト/みやしたゆみ