認知症予防に効果的な栄養成分とは?

【連載】認知症、ならないために:食生活編 その4

Q 認知症予防に有効と考えられる栄養成分は次のどれでしょう?

a カルシウム
b 塩分
c ポリフェノール

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Q 認知症予防に有効と考えられる栄養成分は次のどれでしょう?

a カルシウム
b 塩分
c ポリフェノール

近年、認知症予防食の研究が進み、食生活によって認知症をある程度予防できることがわかってきました。aのカルシウムと認知症の関係はわかっていません。

bの塩分は、認知症の危険因子の筆頭です。塩分の摂りすぎは高血圧の原因になり、高血圧は脳梗塞の原因になります。そして脳梗塞は認知症を引き起こす要因のひとつ。つまり塩分の摂りすぎは、高血圧→脳梗塞→認知症という負の連鎖の引き金になります。というわけで、

答えはc、ポリフェノールです。

ポリフェノールは植物に含まれる成分のひとつ。緑茶や赤ワイン、カカオなど渋みや苦みのある食べ物や飲み物に含まれていますね。もともとポリフェノールの役目は植物を紫外線から守ること。細胞を酸化から守る「抗酸化作用」を発揮します。

植物も動物も「酸化」することによって、徐々に細胞が弱くなり、身体が弱くなり、病気になりやすくなります。ポリフェノールを摂取することで、ある程度、身体の細胞を酸化から守ることができます。

抗酸化作用のほか、ポリフェノールには動脈硬化やお肌のトラブルを予防する働きも認められています。また、脳の働きを活発化させる働きもあると考えられています。

脳の神経細胞は年齢とともにどうしても衰えていきます。特に、脳の記憶を司る海馬の細胞が著しく減少してしまったのが「アルツハイマー型認知症」です。近年の研究では、ポリフェノールを豊富に含むカレースパイスや赤ワインなどが「アルツハイマー型認知症」だけでなく、「レビー小体型認知症」の予防にも役立つことが示唆されています。

ポリフェノールはカテキン、アントシアニンなどのいくつかの種類があります。それぞれ豊富に含む食べ物、飲み物を紹介します。

●カテキン:ワイン、緑茶、リンゴ
●アントシアニン:ブルーベリー、ムラサキイモ
●タンニン:お茶、赤ワイン、柿、バナナ
●ルチン:ソバ
●フェノール酸:コーヒー

バランスよく食生活に取り入れて、認知症予防に役立ててください。

(ひとくちメモ)◎認知症の薬とは?
認知症の薬は、1999年に初めて発売されました。「アセチルコリン」という脳内物質を増やすことを目的にした「アリセプト」(一般名「ドネペジル」)という薬です。現在はこのほか、脳の神経細胞を守ることを目的にした「メマンチン」(一般名「メマリー」)という薬があります。

(「認知症、ならないために」は毎週日曜15:00更新予定)

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■監修■伊古田俊夫
いこた・としお 1949年生まれ。1975年北海道大学医学部卒。勤医協中央病院名誉院長。脳科学の立場から認知症を研究する。日本脳神経外科学会専門医、認知症サポート医として認知症予防、認知症の地域支援体制づくりに取り組んでいる。著書に『40歳からの「認知症予防」入門』(講談社)など。

[伊古田先生からのメッセージ]→「認知症予防とは、認知症を『先送り』することです」
認知症を「予防する」ということは、「一生、認知症にならない」ということではありません。認知症の原因は、今もわかっていないからです。確かなことは脳の老化だということ。ですから認知症を100%予防することはできませんが、発症する年を「遅らせる」ことはできます。いわば認知症の先送り。これが予防策をみなさんに広く知ってもらいたいと願う理由です。

文/佐藤恵菜 イラスト/みやしたゆみ

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