認知症の危険性を高める生活習慣病はどれ?

【連載】認知症、ならないために:ライフスタイル編 その4

Q 次のうち、認知症になる危険性を高める生活習慣病を2つ選んでください

a 高血圧
b 糖尿病
c 高尿酸血症

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認知症

Q 次のうち、認知症になる危険性を高める生活習慣病を2つ選んでください

a 高血圧
b 糖尿病
c 高尿酸血症

近年の研究から、アルツハイマー型認知症と生活習慣病との間に、深い関係があることが明らかになってきました。

中でも深く関わってくるのが高血圧と糖尿病です。この2つによって認知症になるリスクは2倍になるとされています。このほか、高コレステロール血症も認知症のリスクを高めると指摘されています。高尿酸血症は痛風の原因になりますが、今のところ認知症の発症との関係は認められていません。答えはaとbです。

高血圧、糖尿病、高コレステロール血症。この3つに思い当たるものはありませんか? そうです、メタボリック症候群、通称メタボです。40歳以上の人は1年に1度、特定健診(メタボ健診)を受けていらっしゃると思います。これの検査項目が、高血圧(血圧)、糖尿病(空腹時血糖値)、高コレステロール血症(コレステロール値)ですね。

高血圧は脳梗塞や脳出血を引き起こす原因になります。それが前頭葉や前項葉など脳の精神的な活動を司る部位に発生すると、認知症につながる可能性が高いのです。

糖尿病はアルツハイマー型認知症の発症リスクを2倍に高めます。アルツハイマー型認知症は、脳にアミロイドβという物質が蓄積することで症状が悪化します。健康な脳では、アミロイドβが蓄積しないよう、「インスリン分解酵素」というものがアミロイドβを分解してくれます。しかし、糖尿病の人はふだんからインスリンがたくさん分泌されるため、「インスリン分解酵素」はその対応に忙しく、アミロイドβの分解まで手が回りません。その結果、脳内にアミロイドβが蓄積してしまうという仮説が有力です。

高血圧、糖尿病など生活習慣病は、ふだんの食事や運動によって改善することができます。認知症予防の観点から言えることは、生活習慣病は高齢になってから治療しても効果が薄く、40代から65歳までの健康管理がきわめて重要であるということです。

(ひとくちメモ)◎診断はどのように行われる? アルツハイマー型認知症の人の脳をMRIで撮影すると、前頭葉と前項葉に萎縮が見られます。萎縮がはっきり見られる段階ではすでに症状がかなり進んでいるので、そのまえに早期発見、治療することが大切です。

(「認知症ならないために」は毎週日曜16:00更新予定)

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■監修■伊古田俊夫
いこた・としお 1949年生まれ。1975年北海道大学医学部卒。勤医協中央病院名誉院長。脳科学の立場から認知症を研究する。日本脳神経外科学会専門医、認知症サポート医として認知症予防、認知症の地域支援体制づくりに取り組んでいる。著書に『40歳からの「認知症予防」入門』(講談社)など。

[伊古田先生からのメッセージ]→「認知症予防とは、認知症を『先送り』することです」
認知症を「予防する」ということは、「一生、認知症にならない」ということではありません。認知症の原因は、今もわかっていないからです。確かなことは脳の老化だということ。ですから認知症を100%予防することはできませんが、発症する年を「遅らせる」ことはできます。いわば認知症の先送り。これが予防策をみなさんに広く知ってもらいたいと願う理由です。

文/佐藤恵菜 イラスト/みやしたゆみ

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