苦手だったはずの運動と読書に目覚めて【金賞受賞作文】

9月の金賞受賞作文/「学びと私」作文コンテスト

「学び」は楽しいこと。それがストレートに伝わってくるのが、9月の金賞作文としてまず初めにご紹介するパパパパさんの作文です。知れば知るほど、「知らないこと」が気になるのが「学び」の深み。私たちもがんばりましょう。

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金賞受賞作文

「学び」は楽しいこと。それがストレートに伝わってくるのが、9月の金賞作文としてまず初めにご紹介するパパパパさんの作文です。知れば知るほど、「知らないこと」が気になるのが「学び」の深み。私たちもがんばりましょう。

情報機器に頼れない2つの課題

 小学生の頃から図画工作と理科実験の類には無類の関心を持ったが、そのほかのことには、からきし興味がなかった。概して勉強は嫌いで運動も苦手だった。字を書かせれば乱雑。計算をさせれば間違う。ほとんど読書をしたこともない。そんな子供の姿を見て両親は将来を案じていた。しかしその後、計算機が普及し、文書はワープロソフトで書くのが一般的となったおかげで、計算ミスも究極の癖字も咎められることが無くなり助かった。

 とはいえ人生は甘くない。情報機器では克服できない課題がふたつ残った。ひとつは五十歳代に差し掛かった頃の健康診断で運動不足、生活習慣病の予備軍と指摘されたことである。渋々、皇居一周のウォーキングを始めてみた。ところが意外にもこれがことのほか面白くなった。タイムを縮める喜びを知っていつしか走り出し、もはやハーフマラソンを、そしてその先のフルマラソンを狙うジョガーと化した。

 もうひとつの試練はこの先の社会がどうなっていくかについて考えてみたくなったことが契機だ。孫の顔を見たせいかも知れない。というのも先般発表された平均寿命を見る限り昨年日本で生まれた子供は22世紀まで生きる可能性が高いのだ。人生の長さなど気にならない若い頃と違って、次の世代がどんな時代を生きていくのかに興味を持った。

読書で知識の素地を作る

 ところが考えてみたところでなにもわからないのだ。自分のなかには考える土台がないことに改めて気がつき愕然とした。後悔しても仕方ないが、これまでずっと社会・政治・経済のことは聞きかじり程度の知識で誤魔化してきたのだから無理もない。とりあえず本でも読んでみようと思い立ったのだが、人文系、社会科学系の学問とはほぼ無縁で生きてきたため、当初は何を読めばいいか全くわからず、何となく手にした本も苦痛を感じながら字面を追うのがやっとだった。それでも何冊か読んでいくうちに頭のなかで文脈が繋がっていった。視界が開けたような気がしてからは止まらなくなった。

 そもそも国とは、社会とは、文化とは。歴史とは、宗教とは、資本主義とは、民主主義とは、自由とは。アメリカ、ヨーロッパ、アジア、そして日本とは日本人とは。人口知能、脳科学、再生医療、科学の将来といった問いが頭のなかを駆け巡っていく。その度に書店に駆け込んでは買いだめする。しかし、読めば読むほど知りたいことは増えていき、一向に収束しない。掘り下げていくとまた底が抜ける。いまは年に100冊程度は読むが、もっと時間と体力があればと願う。満員電車も貴重な読書タイムであるが、降車駅を乗り過ごしてしまうのは要注意である。

将来の人たちにアドバイスを残したい

 いま大それた、しかし密かな夢がある。日本の将来、そこで暮らす人のために有益な、なにか小さなアドバイスめいたものをまとめたいと思う。

 苦手としてきた運動と読書。六十歳を前にしてそれにはまってしまったようだ。けれども人生をトータルで平均すれば、人は幸せな時間と苦労する時間、勉強する時間と遊ぶ時間の比率は同じようなものではないか。であるとすれば、これまでの自分の学習時間はどう贔屓目に計算しても、到底、世の平均には及んでいないということは自信がある。運動の面白さ と読書の充実感を感じることができる今があるのは、運動不足と不勉強のままこの歳まできたことの裏返しであると苦笑と感謝(?)しつつ、この走りと学びは続くのだ。

 

パパパパさん(57歳)/神奈川県/最近ハマっていること:ジョギングと読書

 

(編集室が文字の修正、改行、タイトル付けなどをしています)

イメージ写真/(c)tamayura39 / fotolia

 

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