私の小さな『先生たち』

11月の一次審査通過作文/「学びと私」作文コンテスト

JUKeKUJさん(31歳)/埼玉県/最近ハマっていること:旅行

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JUKeKUJさん(31歳)/埼玉県/最近ハマっていること:旅行

 「ドキドキ」「ワクワク」「ハラハラ」子どもの頃に感じていたこの感情。様々なことに期待を抱き、興味を持ち、目を輝かせて突っ走っていけた。大人になってから、社会人として働き始めてから、この感情と無縁になったような気がする。攻めより守りに入り、何かの上に座り込んでいる自分がいることに、幸いにも気づくことができた。
 保育士の私は、保育園で、多くの子どもたちと接している。子どもたちから「せんせー」と呼ばれ、保護者からも「先生」と話しかけられ、プライベートで偶然出会った時も「先生!」と声をかけられる。この名称は、私にとって不自然に覚えてならない。むず痒くさえ感じる。それは、まったくの逆で、ひとりの保育士として、ひとりの人間として、子どもたちから多くのことを学び、教えてもらっているのは、他ならぬ私自身であり、子どもたちこそ、私の「せんせい」なのである。年齢を重ねるにつれて、忘れていき、埋もれてしまう大切なことを、自然と、惜しみなく提供してくれる、かけがえのない「せんせい」なのである。
 しかし、子どもたちこそが「せんせい」との考えは、しばしば麻痺してしまいがちであり、私は、「先生」という台の上に深々と座してしまう弱い存在である。その麻痺を解消し、学ぶ姿勢を忘れず、子どもたちから楽しく学びつつ、子どもたちと一緒に成長し続けたい!との願いから、最近、書道教室に通い始めた。
 「ここのはらい、いいね。」「字の形、よくなってきたよ。」赤い墨で丸を貰う度に「ドキドキ」して嬉しくなる。「縦の線は、体で引いてみよう。」と書道教室の『先生』と一緒に筆を持つと、筆の動きの感覚が筆を通して伝わってくる。できなかったことができるようになると、「ワクワク」して、また頑張ろうと思える。できないことを克服しようとして半紙に向かう時、「ハラハラ」しながらも深呼吸をして落ち着かせようとする。これこれ!と再確認できる瞬間だ。この「ドキドキ」「ワクワク」「ハラハラ」…。これこそ、子どもたちと一緒に体験したい瞬間!生涯味わいたい感覚!楽しくて仕方がない。学ぶことの楽しさは、まさに、この「ドキドキ」「ワクワク」「ハラハラ」にあるのではないだろうか…と思えるほど、私の背中を押してくれる感覚だ。
 平日の仕事帰りに通う書道教室。毎日「先生」と呼ばれても、教えてもらう感覚、学ぶ感覚、さらに心を弾ませてくれる楽しい感覚を養いに、これからも通い続けたい。そして、その感覚を抱いて、私の小さな「せんせいたち」から、大きな学びをし続けたい。そう願わずにはいられない。学び直し…私にとってそれは、子どもの頃に抱いていた感覚を取り戻すことなのかもしれない。

 

(編集室が文字の訂正などをしています)

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