異物を押しやる、異物を取り込む。すさまじい植物の防衛術とは

樹木のふしぎ

  • 公開 :

ときには細い木が太い木をとりこもうとすることも

堀大才先生

東京農業大学非常勤講師の堀大才先生

押しやろうとしたり取り込もうとしたり。これを判断しているのは、もちろん“脳”ではない。ではどこが指令を出していいるのだろうか。堀先生によれば、これもまた植物ホルモンなのだという。ホルモンの作用とはかくも絶大なものなのだ。

自分の体の外に消化酵素を出し、相手を溶かしてから吸収する菌類

堀先生の解説する樹木の防御反応も恐ろしいが、以下に語られる菌類の食事方法もなかなか怖い。

樹皮がはがれたり、虫に食われたりすると、きのこなどの菌類の胞子が付着し、そこから菌糸を伸ばして木を食べ始めます。菌類の食べ方は、動物の食べ方とは違います。動物は食べ物を摂取するとき、相手を一度自分の体に取り込んで、体内で消化酵素を出して消化します。しかし菌類は体外に、セルロースを分解するセルラーゼなどの消化酵素を出して溶かして吸収するんです。この栄養の摂取の仕方が、動物と菌類の大きな違いです。当然、樹木はつよい防御反応をし、そこで菌類による分解が終わります。しかし後には菌の食べ残しができる。それが空洞となります

空洞ができると木はそれを察知する。なぜ察知する必要があるのか。風を受けて幹や枝が揺れるとき、それを伝えない部分ができるからである。そこで木はその周りの年輪成長を早めて太らせたりする。よく木の一部がぷっくりふくれていることがある。私たちはそこが肥大しているから丈夫なのだろうと思いがちだが、じつは何か理由があって肥大成長をさせているということで、そこは弱い部分なのだ。

堀先生は語る。

樹木は動物より長い年月、生きる生き物です。しかし、一度ある場所に定着したら、場所を変えることはできない。動物だったら敵が来たら逃げればいい、寒ければ暖かいところへ行けばいい。だけど、植物は場所を変えられない。その場所で生き続けるために、動物よりもはるかに強い防御反応を持っているのです。樹木の形にはそれが現れているのです

◆取材講座:「樹木の形を読みとく」(東京農業大学オープンカレッジ・世田谷キャンパス)

文/まなナビ編集室 写真/SVD、(c)springtime78、(c)沖 上田 / fotolia

1 2 3

-講座レポート
-,

関連記事