時を越えて

10月の一次審査通過作文/「学びと私」作文コンテスト

中島雅淑さん(34歳)/岐阜県/最近ハマっていること:ラーメン

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中島雅淑さん(34歳)/岐阜県/最近ハマっていること:ラーメン

 私は幼少期からサッカーが大好きだった。その思いが高じて、高校生のころから、サッカー専門スポーツジャーナリストを志していた。
 専門書を読み漁り、知識は他の追随を許さないと言っても過言ではないほど、持ち合わせていた。しかし、夢の具現化のためには、正しい方法論が必要となる。現在のサッカー界において、スター選手が集う主戦場となっているのは、ヨーロッパ。その中でも、イタリアとスペインに惹かれた私は、独学で、イタリア語、スペイン語の勉強をし始めた。男性名詞、女性名詞など、誰の力も借りずに身につけていくにはかなりの困難が伴う語学であるが、なにより、サッカーが好きである、この壁を突き破り、その先にある世界を見てみたい。その不退転の決意で、黙々と取り組み続けたのである。
 学校卒業後は、念願だった東京の出版社に就職することができたが、残念ながら、今で言う「ブラック企業」だったため、そこから、大きく飛躍することができなかった。広げた翼は志半ばで休めることを余儀なくされてしまったのである。
 あれから十数年が経った。今も私はサッカーがとてつもなく好きなティフォージ(イタリア語で特に熱狂的なファンで、時に暴力的な行為に及ぶ集団のこと)であることは変わりはない。しかし、スポーツジャーナリストというもうひとつの目標は遠く離れてしまっている。  ようやく生活も落ち着きを取り戻して、金銭的にも充実してきたこの頃、ある大学の講演でイタリア語やドイツ語を学ぶ講座を受講する機会があった。 強い思いを胸に学習していた当時である。 長い年月を経ても、単語や言い回しは強烈に頭の中にこびりついている。やはり、学問でも、スポーツでも、万物は「気持ち」によって大きく左右されるのだな、と実感している。
 現在はだいぶ流暢にしゃべれるようになった。もし現在の状況をイタリア語で表現するならば CI Vediamo(また会いましょう)ということになる。あのときよりはるかにマスターしたイタリア語を引っさげて、今度こそイタリアへ。夢にまで見たヨーロッパ上陸へ。そのときはもう目の前まで来ている。それこそが私にとって最高の至福のときだ。

学びと私コンテスト

 

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