何年も先のカレンダーの曜日を言い当てる人
「同じ人間でも、人によって見え方や聞こえ方が異なる場合があります。発達障害と呼ばれる人たちはその感覚が鋭敏なのです。日光はまぶしすぎるし、スーパーやカフェはうるさすぎる。こう感じる人たちが、いくら先生から『落ちつきなさい』と言われても、本人にはどうしようもない。こういう時に、その人の中に入って、その人がどう感じるのか、どう見えるのかを考えることが重要です。
現代でも一律に『知能検査』のようなもので数値を測って、数値がいくつなければいけないなどと偏見を持って決めてかかる傾向はあります。発達障害と呼ばれる人たちには、何年も先のカレンダーの曜日を言い当てたり、写真を撮るように教科書を暗記することができる能力を持った人たちがいます。ひとつの基準で判断する時代は20世紀初頭に終わったにもかかわらず、偏見を持たれているのです」
100年前、すでに学問の多くのジャンルでは、主観から客観へと意識が変わっていった。なのに私たちは、あまりに主観にとらわれすぎていないか。もう少し柔軟に考えて、他者の立場に立って物事を考えようという哲学者ユクスキュルの考え方は、現代にこそ必要だろう。発達障害が15人に1人という大きな割合で存在するということは、彼らの能力が、淘汰されるべき欠点ではなく、必要不可欠なものだという説もあるくらいだ。
この講座は、ややもすると難解になりがちな「哲学」を、わたしたちの身の回りの事象に置き換え、解説するものだった。哲学は、本のみで勉強するより、講座というライブの場で教えてもらえば、よく理解でき楽しめる学問なのかもしれない。
(続く)
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子供の才能を伸ばす場に 大学講座の新たな可能性
取材講座:「哲学 ― 常識批判の基盤を形成するために ― 」の第6回「人間と動物―動物は人間よりも劣っているのか―」(早稲田大学エクステンションセンター中野校)
文/和久井香菜子 写真/和久井香菜子(講座写真)、(c)Photosebia、(c)Hawkeye、(c)mykeyruna / fotolia
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