憲法には「幸福」という言葉が書かれている
――この「憲法入門-日常生活の視点から考える-」講座(中央大学クレセントアカデミー。5月19日開講)では、どのような話題が取りげられるのですか?
橋本:公開講座の受講生は社会人ですから、皆さんが興味を持つようなタイムリーな話題を提供したいと思っています。今年前期は、最もホットな話題である天皇の生前退位の話題と、選挙制度の話題を取り上げる予定です。90分の授業を3回行いますが、毎回、受講生から熱心な質疑が寄せられます。受講生の多くは、60代から70代の方で、定年退職後に改めて憲法を勉強していようという方が多いようです。
――講義にあたって、とくに意識されていることは?
橋本:憲法はわたしたち国民を守るためのものです。もっと憲法をわたしたちの暮らしに近づけるために、「できるだけわかりやすい、日常の言葉を使って、憲法を考えてみよう」と、5、6年前に始めたのがこの講座です。憲法はけっして私たちの日常生活と別のところにあるのではなく、私たちの暮らしや人生観に深くかかわっているのだということを、講義の端々に伝えていきたいと思っています。実際、「こんな条文があったの?」と驚かれることもしばしばです。
――それはどんな条文ですか?
橋本:たとえば「幸福追求の権利」というのが憲法13条にあります。「幸福」という言葉が法律用語として憲法に書かれていることに驚く方がたくさんいます。「では、あなたにとって幸せとは何ですか?」といった質問を投げかけると、自分にとっての幸せとは何かを考える。そして、「幸せは結局、一人一人が決めることだよね」という話になり、そこから「自己決定の権利」へと理解が及んでいく。すると、「生きるか死ぬか」「誰と結婚するか」「何を食べるか」、そういうことを決めるのは本人の自由だ、ということが憲法に書かれているのだ、ということがわかってきて、そこに日常生活と憲法の接点が生まれます。