独学で童話を書き始めてから、かれこれもう八年。とはいえ、その間に二人子どもを産み育て、その中で書くことができる物語といえば、原稿用紙五枚程度のありがちな物語をなぞったようなちょっとしたお遊びだったかもしれない。それでも、少しの間だけでも空想の世界に浸って、羽を伸ばしながら書くという作業は私にとって貴重なひとときであり、現実逃避しながら夢をおいかける至福のときであった。
童話賞や公募を見つけては応募もしつづけた。賞をいただいたり、雑誌に掲載されたときはとてもうれしかった。でも、なかなか望むような結果は出ない日々。また書けば書くほど、どこをどう直せばもっと面白くなるのか、よくなるのかわからず、孤独な作業ゆえ悶々とすることもあった。
それでも、ペンを置くことはなかった。やっぱり書くことが好き。頭に浮かんだとっておきのストーリーならなおのこと、書かずにはいられない。
そんな折、童話講座の存在を知った。よしっ、子どもたちが幼稚園に通うようになったら、まっさきにいこう!そう思って、それを励みに、ひとりもくもくとお話を書き続けた。
その念願のときが、今年の四月ようやく訪れた。次女も幼稚園に通うようになり、まとまった自分の時間が持てるようになったのだ。それまで娘たちの昼寝の時間を利用してペンを握っていた私に、本格的に集中して作品をつくる機会が訪れたのである。
さっそく、お知らせを見かけるたびに行きたくてうずうずしていた、カルチャーセンターにて開催されている童話講座の見学を申し込んだ。子どもが離れたらまずやりたいことリストの一番最初の項目を、迷わず実践に移したのだ。
講座の内容は、持ち寄った作品を受講生ひとりひとりが読み上げたあとで、他の受講生たち及び、講師の先生から講評を受けるというもの。年齢も性別もばらばらだけど、みんな、真剣そのものだ。積極的に意見が交わされ、濃くて充実した一時間半。あっという間に終わった。
その晩、私は興奮して眠れなかった。私だったら他の受講生の作品をどう直すだろうか、次回どの作品を持って行こうかと、あれこれ考え続けた。
二週間後、私は書き溜めておいた中でも一番の自信作を持っていき、緊張気味に発表した。原稿用紙十枚分読み上げたのち、喉はからからになってしまった。そのときの周りの反応は、なかなかおもしろい。ほっと、私はひと安心した。でも、みんなから温かい言葉をいただいたのは最初だけで、近頃では手厳しい意見もバシバシいただいている。ありがたいことだ。
先生のアドバイスはいつも的確で、同じ志をもつ人たちの作品に触れるというのも、とても刺激的で参考になる。まるで大学のゼミを彷彿とさせて、青春時代に遡ったような面持ちである。
このときばかりは子どものことをしばし忘れ、主婦であることも脇に置いといて、瞳を輝かせながら自分が好きなことに没頭している。限られた時間で、目的がはっきりしているからこそ、学生のときよりももっと学ぶのが楽しい。講座の余韻を残して、家に帰る私の足取りは毎回軽い。
せっせと自転車を漕いで子どもをお迎えに向かう私は、前より明るく元気はつらつとしたママになってきたような気がする。おかげで、子育てにも余裕がでてきた。
さて、いまの目標は、自分が書いた作品を本として出版すること。そして、子どもたちの心の琴線に少しでも触れることができたらいいなと思っている。
そのために、仲間たちと励まし励まされながら、これからも筆力のみならず自分自身をもしっかり磨いていきたい。
(作文の一部に編集室が文字の修正などをしています)