学ぶこと仕事をすることの楽しさ

11月の一次審査通過作文/「学びと私」作文コンテスト

おりた はじめさん(67歳)/兵庫県/最近ハマっていること:文筆活動で小説を書く

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おりた はじめさん(67歳)/兵庫県/最近ハマっていること:文筆活動で小説を書く

 昨年、外の世界を見たくて工業高校卒業後、46年間勤めた会社を中途退職した。上司、同僚から慰留もあったが、会社によって敷かれたレールを離れ自力で歩いてみたかった。
  そして、出来れば会社で決まった序列を世間の評価で変えたいと思った。今から思うと自信過剰だったかもしれない。前職で社内Web(イントラネット)の企画、立ち上げ、運用を行い社外から高い評価を受け、この関連で“ネットビジネス”に挑戦したいと漠然と思っていた。中途退職で自分を死地に追い込むことによって覚悟を示し、火事場の馬鹿力に期待した。

 まず、技術を磨くためハローワークの紹介で、無料の講習を受講することにした。3回不合格になり諦めかけた4回目の受験で合格し、“実践Web作成と運用”という5ヶ月のコースを受講出来た。
 そして私の学び直しが始まった。20~30歳代の若者に交じって、手のこむら返りに耐えながらホームページ作成、イラストレータ、フォトショップ等の最新技術を、日曜日を除きパソコンに一日、13時間以上向かい必死に学んだ。講師の指導が良く技術は格段に向上し、見栄えのするホームページ作成、ポスターデザイン、写真とデザインの融合等も出来るようになった。

 しかし、高齢と美的センスに劣るとの企業の厳しい評価で、再就職は難しかった。『俺は腐ったリンゴか』との思いを持った。仕方なくネット経由で仕事を始めたが、徹夜で頑張っても月2万円稼ぐのがやっとで気力を失い挫折、2カ月間ゴロゴロと過ごした。妻と一日中顔を突き合わせていると息が詰まりそうで、邪魔者扱いされ妻の表情も暗くなった。
 マイペースで生活していると体力が落ち、6カ月前に自転車で登れた坂が登れなくなり体力の衰えを自覚した。この出来事が私の背中を押しシルバー人材センターに登録した。

 直ぐに再就職が決まった。管理職だった私が、今は自分の身体と手を動かして仕事をしている。相手は親切な客、高圧的な客、不機嫌な客と様々。自分を鏡で見ているようで勉強になる。
 自分が思っている半分も仕事が出来ないし、処理能力も低く入力の桁間違い、FAXの誤送信など、自分でも想像出来ない失敗をする。自分が情けなくて何回か涙も流した。失敗を取り戻すために創意工夫もするが、また失敗する。前職の私なら、失敗した部下に理由を十分に聞かずに怒鳴り散らしていた。まさにパワハラそのものだった。ここでも私の人生の学び直しが始まった。

 今の職場は間違った時にも年下の先輩が優しく指導してくれる。そして、私も素直に聞くことが出来るようになった。これがもう少し早く出来ていたらと思うが後の祭りだ。この優しさがあれば、違った人生があった。
 そして、就職1カ月でようやく、「ありがとうございます。行ってらっしゃい」とお客様に声が出るようになった。まだ機械的に声を出していて心の底から出ていない。伝票と売上が合っているか、手作業で確認する。数万の売上でも合えば嬉しく満足感がある。 さまざまな失敗と経験を重ねながら成長しているのが自覚できる。それでも、“ネットビジネス”をするとの初心は忘れておらず、独学でデザインを学び再起を期したいと思っている。今回の学び直しと再就職を“ネットビジネス”に活かしたい。
このように紆余曲折があったが、学ぶことと働くことの難しさと楽しさを知った1年だった。

(編集室が文字の修正などをしています)

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