学び直しの先に見えたもの

11月の一次審査通過作文/「学びと私」作文コンテスト

KEIさん(36歳)/宮城県/最近ハマっていること:読書感想文・エッセイ・作文の公募に応募すること

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KEIさん(36歳)/宮城県/最近ハマっていること:読書感想文・エッセイ・作文の公募に応募すること

 「書きたい、伝えたい」
私のこの想いとシンクロするような、そんな主人公が登場する小説に出逢った。全ては感想文を書き上げるためだったが、読み始めるうちに主人公に自己投影し、気が付くとどっぷりとその世界観に浸かっていたのだ。
 『感想文』と聞くと、アレルギー反応を起こすように苦手意識を持つ人も多いのではないだろうか。中高時代、夏休みの課題に必ずといって良いほど出され、敬遠する余り、夏休みの終盤に慌てて読み始める。身が入らない上に書き方も知らない。それでいてミッションの文字数はそこそこな分量だ。目の前の悩ましい課題をどうやってやってのけるか、当時の私も例外ではなく困惑したものだ。
 感想文を書き上げるコツとして、本文の引用という方法が用いられる。自身が感銘を受けたり、自身を顧みるきっかけとなった経緯を、その一節を借りて表現していくのだ。また、全く別の書籍から引用し、角度や視点を変えて、ポイントが同方向であると話をもっていく。私はこの後者の手法を用いた際、とある有名な古典文学作品を引き合いに出した。二十年振りに改めて一読してみると、高校生の時分に感じた『小難しい言葉のオンパレード』であるとか、『理解するには時期尚早な大人の世界観』といった感覚は、すでに皆無だった。年齢や経験を重ねるうちに、すっかり汲み取り方も変化していたのだ。
 そして二十年後。私は感想文を書き上げるだけの武器を装備していた。大学時代に受けた法的思考入門の講義で、文章の書き方を教わったのだ。有名な『起承転結』から『序論・本論・結論』の三段構成、最後は法学部らしい『三段論法』だ。入試のために小論文の書き方を教わった経験のある人も多くいるだろう。私はむしろ大学で初めて学び、何度もレポートを書かされてはその訓練を受けたものだ。十数年後にここまで役に立つとは、学生時代の私には想像もできなかっただろう。
 完成した感想文を反芻して思う。学びは先着順に蓄積されていくが、思いもよらないところで突然パズルのピースがうまくはまるように、しっくりと繋がっていくものなのだと。感想文を書き上げるため、文章の書き方を学び直した。構成のみならず、句読点や括弧書き、引用のルールさえも。そこから派生して、古典文学をも学び直した。奥深い豊かな表現を吸収するために。
 意外性の中から生まれた結果は、驚きと共に確かな手応えを残した。「書きたい、伝えたい」というその想いが、点在する過去の知識を集結させ、学びの原点に悦びを見出だすことができたのだ。学び直しの楽しさは、単に知識の再確認ではなく、他のものには代えがたい恩恵を享受することだった。この楽しさをいつまでも噛みしめながら、これからも私は学びを続けていくつもりだ。

学びと私コンテスト

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