2本の線はどっちが長い?
物が不思議な見え方をすることは、日常生活の中でもよくあることだ。たとえば同じ縞模様の洋服でも、横縞(ボーダー柄)を着るか、縦縞(ストライプ柄)を着るかで、やせて見えたり太って見えたりする。このように目から入った情報が実際とは違って知覚されることを「視覚の錯覚=錯視(さくし)」という。
たとえば次の図形を見てみよう。この三角形の中にある2本の点線の長さはどちらが長いだろうか。
答えは「同じ」である。三角形は上に向かってすぼんでいて、遠ざかるように見える。そのため、2本の点線のうち、上の線のほうが下の線より長く見える。これは遠近感が引き起こした「錯視」である。和氣先生は語る。
「錯覚は長い間、世界中で愛されてきたテーマです。たとえば2015 年、『The Dress』という錯覚の画像がネットで大変な話題となりました。人によって青と黒のドレスに見えたり、白と金のドレスに見えたりする画像です。実際は青と黒のドレスなのですが、背景の光に注目して「後ろから強い光があたっている」と脳が判断すると、「影になっているこのドレスは実際にはもっと明るい色に違いない」と脳が補正して白と金のドレスだと知覚してしまう錯覚です」