本土曜講座で取り上げられた、先生の研究室などで実施してきたAIのゲームへの代表的な応用研究は次の2つだ。
(1) GVGP(汎用ビデオゲームプレイング)
このAIは、ルールを知らないゲームでもプレイを進めていくことができる。それにより「極端に強すぎる敵」や「どんな敵でも倒せる技」の存在など、開発途中のゲームの設計上の不備を簡単に確認できることが期待されるため、国内外のいくつかの研究グループにより進められている。
(2) PCG(コンテンツ自動生成)
ゲームの内容を自動的に生成できるAI。想定したレベルに合わせたステージやマップを自動作成するので、制作コストやデザイナーの負担が軽減し、「プレイヤー」も自分に最適なレベルのゲームを楽しむことが可能なため、ゲームAIの研究者らに活発に研究されてきている。
そして、いまターウォンマット先生が研究を進めているものが、PPG(プレイ自動生成)だ。
これは対戦型格闘技ゲームなどのネット配信を想定したもので、AIが「観戦者」の嗜好に沿ったゲームプレイを自動生成し、推薦してくれるという。
2000年代に始まったAI第3次ブームの特長である「ディープラーニング(深層学習)」を生かし、その人が何を求めているのかを推測し、ウェブでゲームを観れば観るほど、嗜好にピッタリのゲームをAIが創り出して薦めてくれるそうだ。
嗜好といっても人々がゲームを観戦する理由や目的はさまざまだ。暇つぶし、自分の技を磨くため、なかには承認欲求を満たしたいといった心理的な動機も絡む。学界では、これら「観戦者」の種類やニーズについて細かな分析が行われてきたが、一人ひとりを満足させるゲームプレイを提供できるAIの創出が実現するとすれば、画期的な成果だ。