ロシア語の勉強を始めた。一度挫折した。東京にいるときだ。途中で授業にいかなくなった。近くの古本屋で2000円でロシア語の辞書は手に入れた。夫の転勤に伴って金沢に住んだ。国際理解のためのロシア語講座を受けることにした。受講料も10回で8000円というお財布にやさしい価格だ。先生はアンナ先生という女性。本場のロシア語。明るく一生懸命教えてくださる。ロシア語の勉強を始めると、自分の感情をロシア語で表現できることが生きている間にできるのだろうかと考える。あれやこれや日本語で想うのはもう日本語は堪能になりすぎたということかな。ロシア語ではこんにちは、ごきげんいかが、さようなら、ありがとう、くらいしかいえない。
ロシア語を習い始めて、わたしの名前、りえ、があちらこちらにでてくる。夏の、というのはりえたん、と聞こえる。りえたん、と呼ばれると、生まれた頃住んでいた社宅の窓からみたオレンジに染まった夕焼けを思い出す。その頃近所に住んでいた人に呼びかけられたような懐かしい感じがする。
りえたんと聞こえる音は夏のというのも驚きだ。なぜならわたしは夏に生まれたからだ。わたしの名前はりえであって、夏子ではないと思っていた。だけれどもロシア語では、夏乃、という名前だそうだ。まるで江戸時代の厳格な女性のような名前ではないだろうか。
グリコアーモンドキャラメルのキャッチフレーズ、二度おいしい、を思い出したりした。自分の名前がモダンで新しい名前と当時は想っていたのに、夏乃。逆に江戸時代の厳格な女性のような名前になるのだった。
故郷の神戸もKOBEとКафеもなんとなく似ている。だから神戸にカフェが多いのかなと思ったりもする。
горькоゴーリカはロシア語で苦いなを意味するらしい。合理化。21世紀に向けて仕事をしていた頃、ITを導入することにより合理化を推進することができますなどと説明をしたりしていた。確かに、合理化は苦みを伴う。合理化で人件費を削減できますなど建前的なことを並べていたものな。
このように意外なところにロシア語と同音のものがあったりする。そうはいってもなかなか覚えられない。クラスの中では一番の落ちこぼれだ。それでもみんなあたたかく接してくれた。先生は明るくほがらかなんだけれども真面目だ。その真面目さに接すると知らず知らずのうちに私自身も真面目になった。受験勉強をしていた頃を思い出した。ひとつ単語を覚えるごとに新しい明日が開けるような気持ちになったあの頃。
授業は終わった。先生はお茶とチョコレートを振る舞ってくださった。そうして終了証もいただいた。空いている時間にロシア語を勉強をしている。まだまだ全然なんだけれども。
ロシア語を学んで
12月の一次審査通過作文/「学びと私」作文コンテスト
鈴木理絵さん(51歳)/石川県/最近ハマっていること:デザイン
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