さぁ、2回戦

11月の一次審査通過作文/「学びと私」作文コンテスト

紗菜さん(39歳)/岩手県/最近ハマっていること:カラオケで昭和の歌謡曲を熱唱

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紗菜さん(39歳)/岩手県/最近ハマっていること:カラオケで昭和の歌謡曲を熱唱

 たった6年で保育士を辞めたのは本当に不本意だった。でも、頑張りすぎて心身のバランスを崩したのは誰のせいでもない、自分。結婚して普通の主婦になった時、“ゆっくり自分の子育てができる。辞めてよかったんだ”と自分に言い聞かせた。不器用なくせに完璧主義な私が、保育の仕事と両立できるはずがないと。
 二人目を産んだ後、私は飲食店でパートを始めた。特技も何も活かせないが、残業も、仕事を持ち帰ることもない。
“母親が本業だもの、やりがいなんてなくていい”そう思っていた。
 上の娘が小学生になった時、学校で絵本の読み聞かせボランティアを募集していた。これくらいなら、と仲間に入れてもらい、さっそく娘のクラスで読ませてもらった。
「おはようございます」
 何年かぶりに見る、たくさんの子ども達の澄んだ瞳。私が持っていった絵本をニコニコしながら見てくれた。読み終えた時、一人の男の子が走ってきた。
「先生!」
「えっ?」
「先生、それ図書室にある?本屋さん?」
久しぶりに先生と呼ばれてドキッとした。子どもにとって、教室で目の前に立つ人は、『先生』なのだ。“ただのボランティアのおばさん”そんな軽い気持ちで生徒の前に立ってはいけないと思った。
 私は絵本について真剣に研究しようと思った。忙しい毎日でも、人気の絵本や作家について、スマホひとつで調べることができる。
“現役の頃はネットなんて使えなかったもんなぁ”
手軽に学べる楽しさと、13年の時の流れを感じた。読み聞かせボランティア研修会にも参加し、私はすっかり保育の世界に引き戻された。また現場に復帰したいという思いが、強くなってきた。
 色んな本を手にしながら、ある資格が目にとまった。『チャイルドコーチングアドバイザー』。子どもの個性ややる気を引き出す、心に寄り添うための専門知識。私は迷わず申し込んだ。
 テキストを読むと、ついやりがちな間違った援助や対応例があり、まさに子育て中の私は大きく頷けることばかりだった。独身の頃なら想像で終わっていたことが、今は手に取るようにわかる。木で例えると、幹の太い木は、その枝に安心して何個も果実を実らせることができる。ひょろひょろで安定感のない枝ばかりだった若い頃に比べ、実もつけやすくなったのだろう。
 歌や人形劇、手品、これからわが子を相手に練習しよう。そう思っただけでワクワクしてきた。保育士としての私、1回戦はボロ負けだったけれど、今度は粘って戦えそうな気がする。

学びと私コンテスト

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