大きく横に枝を広げる木というと、ハワイにある、樹齢120年、樹高25m、樹冠(じゅかん、枝葉が茂っている部分)40mの “日立の木”が 思い浮かぶ。
「“日立の樹” はモンキーポッドという名の南米原産の木で、ものすごく横に広がる木です。私も昔、台湾で、樹高20m、樹冠54mのクスノキを見たことがあります。真上から太陽があたる環境下だと、大きく広がるんです」
横幅が高さの3倍とは。どうして倒れないで立っていられるのだろうか。
「広葉樹をよく見ると、枝が横向きや、場合によっては下を向いているものもありますよね。あれはなぜだと思いますか?」と堀先生。
横に伸びるのは、できるだけたくさん光を受けて光合成を盛んにしようとするから? でもそれだけでは下に向く枝もあることが説明できない……。堀先生はやじろべえを例に、その理由を説明する。
「やじろべえは左右両端の先端が低く垂れさがっていますよね。重心が低いほうが安定するからです。木も風でひっくり返らないように、周囲の枝を下に向けて発達させ、力学的に自分を安定させているんです。そして、木を地面に安定させる最大の役割を負っている根も、広葉樹は針葉樹よりも深く広く発達しています。吹き付ける風に対して、より強い構造となっています」
堀先生によれば、世界的に見ても背の高い木は針葉樹が多く、世界一高い木として有名なセコイア(センペルセコイア)には100mを越えるものが数多くあるという。
ヒノキや杉がよい材木になるワケは
針葉樹は頂芽優勢が強いものが多く、広葉樹のように枝分かれしにくく、幹がはっきりしていて、真っ直ぐに伸びる性質から長い柱を得やすい。だから針葉樹が材木として重用されるのだという。
「木が森の中に密に生えれば、何が起きると思いますか? 光獲得競争です。森の中で生き残るためには、上に上に成長するしかない。光の当たらない枝は落として、上へ上へと成長する。だから枝は上の方にしかなく、幹はあまり太ることができずに細長い形になります。これが森林内で起こる現象です。
枝葉が光合成をして光合成産物をつくると、まずそれを枝自身のために使います。そして余った分を幹に送り、そして幹から根に送る。だから幹のどこが一番太くなるかというと、枝を支えているすぐ下の部分です。枝のついていない部分の幹は太くなりません。さらに植林された杉やヒノキは枝打ちをして下枝をなくします。こうして下から上まで真っ直ぐ同じような太さで成長させた杉やヒノキは、材木として重宝されるのです。また、枝ができるとそこに節(ふし)ができます。節がないほうが材木にするには都合がよいのです」
(続く)
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文/まなナビ編集室 写真/SVD(樹木)、(c)denebola_h / fotolia