a マルチビタミン
b 水素サプリ
c 効果が実証されたサプリメントはない
ドラッグストアやコンビニには、たくさんのサプリメントが並んでいます。認知症の予防に有効なサプリメントはあるのでしょうか? あるならぜひ、試してみたいと思う方も多いでしょう。しかし残念ながら、有効性を示すエビデンス(証拠となるデータ)のあるサプリメントはありません。
答えはcです。
そもそもサプリメントは食品です。医薬品ではないため、効果効能を実証することがむずかしいという事情があります。
aのマルチビタミンはビタミンA、B群、C、Eなどがバランスよく配合されたビタミン剤です。bの水素サプリは最近話題の水素水のタブレット版ですね。水素水には抗酸化作用があると言われていますが、これも今のところエビデンスがあるわけでありません。
ただ、エビデンスがないからいけないとか、飲んでもムダ、と決めつけることもないと思います。サプリメントに関心をもつこと自体、健康へのアクティブな姿勢の表れだからです。
認知症予防には日々の食生活が大切になります。サプリメントに頼らずとも、ふだんの食事からバランスよく栄養を摂るのが理想です。次のような食品を継続的に食べている人たちの認知症発生率は、食べていない人たちよりも30%以上、低いことがわかっています。
・魚介類:特にイワシやサンマ、アジなどの青魚。DHAやEPAが豊富です。
・野菜や海藻:緑黄色野菜、ナス、トマトなど。
・大豆食品:納豆、豆腐など。
・そのほか:乳製品、イモ類、果物など
とはいえ、忙しい日々、毎日バランスよく食べることはなかなか大変かもしれません。ちょっと栄養が足りない、かたよっていると感じた時に、それを補う意味でサプリメントを取り入れてもいいと思います。栄養バランスに気をつけて、サプリとも上手につきあってください。
(ひとくちメモ)◎治る認知症とは?
一般に認知症は治らない病気ですが、中には「治る認知症」もありますので、頭の片隅に置いておいてください。内科の病気で「甲状腺機能低下症」や「ビタミンB12欠乏症」、脳の病気で「特発性正常圧水頭症」による認知症です。厳密にはこれらは認知症ではなく、認知症にとてもよく似た症状が出る別の病気です。
*「認知症、ならないために」は今回が最終回です。認知症関連の新連載は、10/1から毎週日曜更新予定です。ご期待下さい。
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■監修■伊古田俊夫
いこた・としお 1949年生まれ。1975年北海道大学医学部卒。勤医協中央病院名誉院長。脳科学の立場から認知症を研究する。日本脳神経外科学会専門医、認知症サポート医として認知症予防、認知症の地域支援体制づくりに取り組んでいる。著書に『40歳からの「認知症予防」入門』(講談社)など。
[伊古田先生からのメッセージ]→「認知症予防とは、認知症を『先送り』することです」
認知症を「予防する」ということは、「一生、認知症にならない」ということではありません。認知症の原因は、今もわかっていないからです。確かなことは脳の老化だということ。ですから認知症を100%予防することはできませんが、発症する年を「遅らせる」ことはできます。いわば認知症の先送り。これが予防策をみなさんに広く知ってもらいたいと願う理由です。
文/佐藤恵菜 イラスト/みやしたゆみ