英語は話してナンボ〈金賞受賞作文〉

12月の金賞受賞作文/「学びと私」作文コンテスト

こんなご夫婦、うらやましい……と思わずつぶやいてしまうのが、このヤマチャンドラさんの作文です。語学の持つコミュニケーションにおける深い役割が、行間から説得性をもって溢れ出てきます。語学を学ぶということはイコール、人を理解するということなんだなということを改めて教えられました。

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金賞受賞作文

イメージ写真 (c)naka/fotolia

こんなご夫婦、うらやましい……と思わずつぶやいてしまうのが、このヤマチャンドラさんの作文です。語学の持つコミュニケーションにおける深い役割が、行間から説得性をもって溢れ出てきます。語学を学ぶということはイコール、人を理解するということなんだなということを改めて教えられました。

夫婦の会話がいきなりの英語に

「今日から英語で話そう」

 ある日、夫からそう告げられた。

 ニューヨークでの語学留学中に出会い、結婚にまで至った彼。お互い英語への勉強意欲満々の英語大好きな二人ではあるが、生粋の日本人どうしである。

 なぜ、日本語という共通言語あるにもかかわらす英語で話さないといけないのか!?

「いやだ」

 私は反対した。

 しかし、譲らない夫。どうも英語に集中するために、自分の環境を英語一色に染めたいということだ。そんなに頼まれたら仕方ない、そうして2人の英語生活が始まった。

 といっても、始めたばかりは全くスムーズにコミュニケーションがとれなかった。日本語で話していた相手と急に英語でなんて…。なんだか気恥ずかしくて、話しかけ辛くなってしまった。返事をする時も「うん」という代わりに“Yes”と答えなければならない。回りの目も気になるし、文法もとっさに組み立てられないし、言葉が出てこない…そんな私の苦労をよそに、旦那は満足げに“How are you doing?” と話しかけてくるのだった。

 そんな、日本人どうしが日本語なまりの英語で会話する日々。これが、意外と勉強になり驚きの連続だった。

 まず、英語に対する瞬発力が抜群に上がった。外国人が道を聞いてきた時。自然と口をついてくる。

“Okay, go straight and…”

 外国人に対しても全く怖気づかない自分に気がついた。

 続いての驚きは「語彙が欲しい!」という欲望だった。自分の表現力のなさや単調な受け答えに飽き飽きしてしまい、語彙を増やそうと自然と新しい表現を探すようになった。

 街中の広告を見て「この意味は何だ!?」とスマホで調べる。今までは素通りしていたのに。海外ドラマを見ても、“You are busted!” というセリフを聞き、「なるほど、いたずらがバレた時はこう言うのかメモメモ」と教科書以外からも発見を得られるようになった。

1年をかけてもう一度イメージを共有

 もっとも不思議なことは「1年経った今ではすっかり夫との英会話に慣れてしまった」ということだ。夫が “I think it is important.” というだけで、貯金の話をしているということがわかってしまう。

 そして気づいたのは、私たちは言葉の裏側にあるイメージを共有することでコミュニケーションをとっているということだった。

 夫とは今まで日本語で容易にイメージを共有していたが、それが英語での会話によって崩れてしまった。しかし1年かけ、少しずつイメージをすり合わせることで再びお互いの思っていることが共有でき始めたのだった。英語の上達だけでなく二人の関係の深まりまで実感できた。

 これも、「英語で会話しよう」という夫の突飛な提案のおかげである。

 自分と違う文化的背景を持つ人たちとコミュニケーションを取ろうと思うと、できるだけお互いのもつイメージを共有することが必須だ。となると語学を使って、さらにイメージのすり合わせをする必要がある。

 私は語学自体が目的となっていたけど、語学を使ってさらにその奥を目指すことこそが目的なんだな、と気づいた。語学を使って、誰と何をするのか。自分の未来が、またひとつ楽しみになった。

 

ヤマチャンドラさん(26歳)/兵庫県/最近ハマっていること:Netflixでアメリカのホームドラマを見ること

(編集室が文字の修正や改行などをしています)

 

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