イタリア美術の歴史 ー5大都市をめぐる旅ー
駿河台記念館
小林亜起子/深田麻里亜/巌谷睦月
講義詳細
参考図書:ミシェル・フイエ『イタリア美術』(本講座担当講師ほか共訳)、白水社、2012年
第1回 フィレンツェ――花の都、ルネサンスの黎明 10/13 (深田麻里亜講師)
トスカーナ地方の都市、フィレンツェ。15世紀後半、ここフィレンツェにおいてルネサンス文化が花開きました。都市の実質的統治者であったメディチ家をはじめとする貴族たち、新興商人たちをパトロンに、ドナテッロやマザッチョ、ボッティチェッリといった芸術家たちが活躍しました。メディチ家が追放された15世紀末には、共和国政府が成立、レオナルド・ダ・ヴィンチやミケランジェロの競作の舞台ともなっていきます。美術理論や人体の解剖学的知識に裏打ちされた、数々の清新な作品を鑑賞しましょう。
第2回 ローマ――教皇と皇帝の都市 10/27 (深田麻里亜講師)
16世紀初頭、フィレンツェに続き芸術文化の中心都市となったのがローマです。古代ローマ帝国の首都ローマは、中世を経て、キリスト教世界における最高位の聖職者、「神の代理人」である教皇が君臨する国家へと変貌を遂げました。教皇ユリウス2世は、システィーナ礼拝堂装飾のためにミケランジェロを、ヴァティカン宮殿「署名の間」のためにラファエッロをフィレンツェから招聘しました。教皇の都市を壮麗に彩る盛期ルネサンスの芸術について、都市の伝統や古代ローマ時代の文芸との関係もふくめ見ていきましょう。
第3回 ボローニャ――ポルティコの続く街並、画家たちの“聖地” 11/10 (巖谷睦月講師)
イタリア半島の北東部、アペニン山脈とポー川に挟まれたエミリア・ロマーニャ州の都からは、16世紀後半のトレント公会議後に新しい宗教美術の胎動が聞こえます。アンニーバレを筆頭とするカラッチ兄弟のもと、絵画学校が創設されたボローニャは、17世紀前半の画家を目指す若者にとって“聖地”となりました。当時は教皇領であったこの街で育ち、ローマに招かれて活躍した画家たちが、初期バロックを支え、盛期バロックへの扉を開いてゆくさまを、魅力にあふれた作品とともにたどってゆきましょう。
第4回 ヴェネツィア――“アドリア海の女王”、18世紀の煌き 11/24 (小林亜起子講師)
ヴェネツィア共和国は、中世から1797年までのおよそ千年にわたり、アドリア海や地中海貿易によって国際都市として飛躍的な繁栄を遂げました。18世紀になるとヴェネツィアは、古典的教養を身に付けるためにイタリアを旅したイギリス貴族たちの「グランド・ツアー」の要所として活況を呈し、ルネサンス期に黄金期を迎えたヴェネツィア絵画は成熟期を迎えます。ヴェネツィア派最後の巨匠ティエポロの作品や、ヴェネツィアン・グラスなどロココの時代を彩る装飾工芸品に光をあてて、水の都に煌く18世紀の芸術世界を探訪します。
第5回 ミラノ――華やかなりし前衛、イタリア唯一の“都会” 12/8 (巖谷睦月講師)
19世紀初頭、侵略者ナポレオンはこの都市を首都にイタリア王国を創始しました。これを契機に、19世紀後半、地中海に投げだされた足のような半島は「イタリア」という国家に統一されてゆきます。20世紀初頭にやっと本格的な工業化を迎えるこの国で、ミラノは最先端の都市として栄えました。ナポレオンの下で新古典主義を謳歌したのち、激動の時代をこえて前衛の華たる未来派を生み、二つの戦争を経て再びこの国の新たな芸術の中心地となる、イタリアでただ一つの“都会”。その美しさを存分に味わう最終回です。
深田麻里亜:東京藝術大学兼任講師。
巌谷睦月:東京藝術大学美術学部教育助手。
日時の変更もありますので、開講情報は必ずこのページの大学HPからご確認ください。
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