生命科学②老化はコントロールできる/長寿時代を生きるヒント
神楽坂/森戸記念館
田沼靖一
講義詳細
歳をとると物忘れが多くなったり、記憶力や体力も衰えてきます。「老化」はだれしも好まない、いやなイメージしかないでしょう。ところが、歳とともに備わってくる能力があります。それを「結晶性知能」といいます。先を見る力、いろんなことを発想して判断する力、統率力といった高度な知性です。また、風雅を感じとる感性も育まれてきます。この「老いの知性」を活かして、老いの時間を人生の新たなステージとして捉え、自分らしく自由にワクワクした気持ちで運ぶことが大切なことだと思います。
それでは、なぜ人には“老い”というものがあるのでしょうか。「老い」はおそらく、「自分とは何か」を問うことのできるかけがえのない時間なのだと思います。それは、そのなかで自分自身のアイデンティティが完結されていくからです。そして、自分の価値観を人生にどのように反映していくかを、老いの時間のなかで考えていかなければならないでしょう。もう一度、自分の人生ステージを立て直し、自分にしかできないことをしていくようにするのが良いのでしょう。自分のシナリオは、自分にしか描けないのです。
いつも心豊かな夢を抱き、それを形にしていく勇気をもって一歩踏み出せば、きっと生きていてよかったと思える瞬間にたくさん出会えることでしょう。その時間が、人生を豊かに潤してくれるのではないでしょうか。神様からプレゼントされた「老いの時間」は、後の世代に何かよい贈り物を残す時間なのだと思います。それは有形なものでも、無形なものでも夢があればよいでしょう。その夢を誘い出せるのは、自然の美に触れ、感動する心以外にはないと思います。そして、そこで生まれる愛の精神のみが、人の心の中に無限に遺し伝えられていくにちがいありません。本講座では、「老化」を科学の面から理解して、「老い」の時間をよりよく生きるヒントを考えてみたいと思います。
東京大学大学院薬学系研究科博士課程修了。帝京大学薬学部助手、講師。米国立衛生研究所/癌研究所(NIH/NCI)留学。東京工業大学生命理工学部助教授。1992年本学薬学部教授。2011年同学部長。アポトーシス学会会長。
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