遠藤周作『沈黙』が描ききらなかったキリシタンの史実
上智大学公開学習センター
四谷キャンパス
川村信三上智大学文学部史学科教授
-教養その他, 日本文化, 講義詳細
-上智大学公開学習センター, 四谷キャンパス, 川村信三上智大学文学部史学科教授, 講義詳細
講座名
遠藤周作『沈黙』が描ききらなかったキリシタンの史実
概要
16世紀から17世紀にかけて、日本史の一つの現象として生じた「キリシタン史」の意味を、『沈黙』(遠藤周作著)より世界史や日本史全体との関連を、筆者の視点と民衆の視点から考察していきます。 「『沈黙』の史実(ノンフィクション)と小説(フィクション)の識別(筆者の視点)」 16世紀から17世紀にかけて、日本史の一つの現象として生じた「キリシタン史」の意味を、『沈黙』に関連づけて世界史や日本史全体との関連で考察します。遠藤周作の沈黙で描かれたことと「史実」との違いを中心にすえながら、なぜキリシタンは迫害されなければならなかったのかを解明します。同時に、日本思想とキリスト教思想の決定的な対立軸を、日本の宗教思想の最も日本的といわれた「本覚思想」との関連から考察します。 「日本人は何を信じ守ろうとしたのか。何を棄てたのか(民衆の視点)」 江戸幕府の禁教令が出されての後、約20年間で、日本のキリスト教の根は絶たれたと遠藤は描写しました。もちろんそれは事実の一面ではありますが、一方で、250年という禁教時代に、キリスト教の伝統はある部分で生き残っていました。「七代したらキリスト教信仰を自由に公言できる日がくる」と長崎、外海、五島の「隠れキリシタン」たちは希望を繋ぎました。 その根本にあるのが、バスチャンの予言と「こんちりさんのりやく」というオラショでした。『沈黙』に描かれていないこの史実が、実際のところ、絶望的に終焉するはずの「キリシタン」の歴史を、希望の歴史へと変容しています。その点を、神学と歴史の考察から紐解きます。
講師概要
上智大学文学部史学科教授 専攻分野/キリシタン史、日欧交渉史、ヨーロッパ・キリスト教史・著作/『戦国宗教社会=思想史』単著/知泉書館2011年 『ヨーロッパ中近世の兄弟会』共著/東京大学出版2014年
アクセス
JR中央線・東京メトロ丸ノ内線・南北線「四ッ谷」駅麹町口・赤坂口から徒歩5分
日時の変更もありますので、開講情報は必ずこのページの大学HPからご確認ください。
この情報は大学の許可をとっています。