梁組「すごーい」でなく、どこが「すごい」か
高山といえば、飛騨材を贅沢に使った重厚感ある家屋が特徴的だ。風雪に耐える雪国の家、という感じで、いわゆる民芸作りの趣が日本的でかっこいい。青柳先生が高山の町家を表す言葉として紹介されたのが、民家研究の第一人者「伊藤ていじ」さんの言葉。
「(高山の町家は)組織化された格子が奏でる空間の凱歌である」
空間の凱歌! 何て、かっこいい言い回しなんだろう。
青柳先生はかつて、高山の町家28棟を調査し、その梁組の構造がどうやって生まれたのかを調べた。「梁組すごい!」ではなく、どうすごいのか。どこがすごいのか。文化的価値を明らかにする視点で調査したのだという。
その結果、面白いことがわかった。いわゆる「高山的」だと思われている、「純粋な立体格子状の梁組」、つまり「梁が太い、ジャングルジムのような密な組み方をした、圧倒的な迫力の梁組」は明治期以降に見られ、それ以前の梁組には見られない特徴だったのだ。
たとえば下の吉島家住宅の梁組。玄関を入ると広大な空間があり、梁と柱が立体的に組まれている。