室町の王権―『平家物語』と『太平記』から読み解く
早稲田大学エクステンションセンター
中野校
兵藤裕己(学習院大学教授)
-教養その他, 日本文化, 講義詳細
-中野校, 兵藤裕己(学習院大学教授), 早稲田大学エクステンションセンター, 講義詳細
講座名
室町の王権―『平家物語』と『太平記』から読み解く
概要
中世から近世初頭にかけて、源氏と平氏が交替して政権を取るという思想が武家のあいだに深く根づいていた。中世的な権威や慣習の徹底的な打破をめざした織田信長でさえ桓武平氏を自称して、源氏嫡流の室町幕府の足利氏にとって代ることを正当化したし、徳川家康も織豊政権に代って江戸幕府を開くに当って、清和源氏新田流をまず名のった。この源平交替の思想を「図式化してとらえた」のが『平家物語』であり、それを宋学でいう名分論にのっとってさらに強化したのが『太平記』であるという視点から、中世の政治史がこの二つの物語に盛られた歴史認識に支配されていたことを論じる。おもな論点は二つ。一つは、源平交替して天下を取るとはいっても、源氏と平家はそれ自体で権力の主体とはなり得ず、天皇家を守護する「武臣」の立場での覇権であったこと。もう一つは、新井白石や荻生徂徠など、江戸時代の学者・思想家たちによって「武家王朝」として理解された足利義満の権力、すなわち「室町の王権」が、『平家物語』の源平交替史観や、『太平記』の「武臣」交替史観とともに、『源氏物語』における光源氏の王権獲得の物語を背景として成立した、ということである。南北朝時代から室町時代の初期(すなわち14世紀)における物語(および語り物)の成立と享受について考察することから、歴史的な現実が、フィクションの物語によって規定され、生み出されるという、歴史と物語とのダイナミックな関係を論じる。
講座期間
2018/02/24~2018/03/03
講師概要
兵藤裕己
学習院大学教授
愛知県生まれ。1975年京都大学卒業、1984年東京大学大学院修了。1993年埼玉大学教授、1996年成城大学教授を経て現職。1996年『太平記〈よみ〉の可能性』でサントリー学芸賞、2001年「平家物語の歴史と芸能」で東京大学文学博士。2002年『〈声〉の国民国家・日本』でやまなし文学賞受賞。
住所
東京都中野区中野4-22-3 早稲田大学中野国際コミュニティプラザ1階
アクセス
JR中央・総武線・東京メトロ東西線「中野駅」下車北口より徒歩10分/関東バス「東京警察病院北門前」より徒歩1分 【中01】【大02】【宿04】【宿05】【宿07】【阿45】系統/
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