日本美術を英語で語る学習法、海外VIP接待も成功

日本美術を楽しむ(8週間のコース):春原陽子先生

空前の日本美術ブームが続いている。伊藤若冲の展覧会に人が押し寄せ、刀剣乱舞(ゲーム・アニメ)人気から刀の展覧会は大賑わい。日本美術は紛れもない日本文化の最重要コンテンツのひとつだ。しかし多くの訪日外国人に対し、その魅力を私たちは伝えきれているだろうか。テンプル大学ジャパンキャンパスでは、広く学生・社会人を対象に“英語で”「日本美術を楽しむ」講座がある。講師の春原陽子先生にどのような講座か訊いた。

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空前の日本美術ブームが続いている。伊藤若冲の展覧会に人が押し寄せ、刀剣乱舞(ゲーム・アニメ)人気から刀の展覧会は大賑わい。日本美術は紛れもない日本文化の最重要コンテンツのひとつだ。しかし多くの訪日外国人に対し、その魅力を私たちは伝えきれているだろうか。テンプル大学ジャパンキャンパスでは、広く学生・社会人を対象に“英語で”「日本美術を楽しむ」講座がある。講師の春原陽子先生にどのような講座か訊いた。

ビジネスマンが海外VIPを接待するなら美術館

春原先生はジャパンタイムズ紙で日本や韓国、中国などアジアの美術や展覧会をコラムで紹介している美術コラムニストだ。その講座には、日本美術を英語で学びたいという人たちが集うという。

「今は美術館にも外国人の方が多く足を運ばれますでしょう? そのため美術館の学芸員の方や、ボランティアガイドをされている方も受講生にはいますが、じつはビジネスマンの方も来られています。接待で日本文化の薫りのするところに連れていくとき、美術館は最適の場所なんですよ」

なるほど。日本のビジネスマン・ビジネスウーマンの弱点として、自国の文化を知らない、語れない、とよく言われるが、美術館に連れていく、というのはじつに手っ取り早い方法だ。しかもその場で「Tea ceremony(茶道)」や「Japanese sword(刀)」について英語で説明できれば株が上がること間違いない。

早速、美術館での接待にも役立ちそうな「Tea ceremony」についての話を聞いた。

「茶室の中では身分の違いが取り払われるんですよ」

「茶を日本に持ち込んだのは栄西ですが、そもそも茶は禅を組んだあとに眠気を覚ますものだったんですよね。南北朝時代に入って公家や武士の間に闘茶(とうちゃ)が流行ります。茶の出どころを当て合うんですが、現代のWine tasting(ワイン・テイスティング)みたいなものだと思えばわかると思います。

その当時は広い会所(かいしょ=接待の場)で掛け軸もたくさん掛けたりして派手にやっていたんですが、その後、小さな茶室に変化してゆきます。茶室になると、その中で 親密な関係が生まれます。利休が活躍する桃山の時代になると、茶室は武士や商人たちが 商談をしたり、密約を交わす場ともなりました。

茶室の中では社会的地位、階級がないんですね。身分の低い商人も、身分の高い大名も一緒に膝をつきあわせる。そこでは皆、一つの茶碗で回し飲みもいたしました。回されたのは濃茶(こいちゃ)です。回し飲みすることで、より親密な関係を築いていく。そこでは大振りの高麗茶碗が使われました」

茶わんをTea bowl, 茶道具をTea ceremony utencils, 掛け軸をHanging scroll 等と茶道の歴史も、時折英語を交えながら説明されると、お茶の世界をより深く英語で話してみたくなる。

国宝、浮世絵、民藝も

今秋の講座についてシラバス(講義プログラム)からテーマを拾うと……

We will study the aesthetic values that can be used to understand and appreciate Japan’s National Treasures(国宝)and Important Cultural Properties(重文).

How to make an ukiyo-e(woodblock)print(木版刷の浮世絵).

The class will visit the Yamatane Museum(山種美術館) of Art ‘s exhibition “Uemura Shoen and Quintessential Bijinga, Paintings of Beautiful Women(上村松園と美人画の精華)”.We will examine influence of Ukiyo-e art on contemporary artists.

We will visit the Koto City Fukagawa Edo Museum(深川江戸資料館) to view  models of the town of Edo, and experience where the art of Edo was born.

Students will study how to properly handle and maintain traditional Japanese art and will visit Kakei(花徑), an antique shop in Kyobashi.

The class will visit the Hara Museum of Contemporary Art (原美術館)to view “Keiichi Tahara: Photosynthesis with Min Tanaka(田原桂一「光合成」with 田中泯)”and learn about the history of Japanese photography.

We will visit the Japan Folk Crafts Museum(日本民藝館) to view the special exhibition “British chairs admired by Japanese(日本人が愛した英国の椅子).”

Students will view the exhibit “Pinacles of Elegance: Sword Fittings of the Mitsumura Collection(鏨の華―光村コレクションの刀装具―)” at the Nezu Museum of Art(根津美術館).

国宝から入り、日本美術の中でもダントツの人気を誇る浮世絵、古美術の鑑賞法やその扱い方、民藝、そして最後は人気沸騰の刀、と盛りだくさんである。全8回の講座は、初回2セッションが大学での講義、後半6回はすべて先生と美術館をめぐり現地で学ぶ。

こうしてシラバスを見ているだけでも楽しい。美術はそこに物があるから、目で見て理解できる。英語もただ喋るより美術館で作品を見ながら学ぶと理解しやすく、自分の美術作品に対する思いも伝えやすい。日本人ももっと自国のことを知ろう、そして英語で自国のことを語ろう。【まなナビ】では今後もこうした講座を紹介していく。

「一緒に英語で日本美術を学びましょう」と春原先生

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取材・文・写真/まなナビ編集室(土肥元子)

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