自分を再教育する場を見つけて脳から快感物質が

【Interview】45才カメラマンが通い始めた公開講座(後編)

「ビールの世界@上智大学」でトラピストビールのおいしさに目覚めたものの、4月からは新たに「英語上級 Writing Better Step by Step@慶應義塾大学外国語教育研究センター」を受講し、「以前ほどお酒を飲まなくなりました」と渡邉さん。「お酒を飲むと眠くなって宿題ができないですから…」。今は、自身の「再教育」に夢中で、「お酒よりも勉強が楽しい」と話す。

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学んだ講座

学んだ講座

「ビールの世界@上智大学」でトラピストビールのおいしさに目覚めたものの、4月からは新たに「英語上級 Writing Better Step by Step@慶應義塾大学外国語教育研究センター」を受講し、「以前ほどお酒を飲まなくなりました」と渡邉さん。「お酒を飲むと眠くなって宿題ができないですから…」。今は、自身の「再教育」に夢中で、「お酒よりも勉強が楽しい」と話す。

英語を学び直して、自らをアップデート

もともと英語が好きで、大学時代にはアメリカに留学していた。それが、30歳でカメラマンに転身してからは英語に触れる機会がぐっと減り、自分の英語力に中途半端さを感じていた。

「ここ数年、カメラマンは、雑誌の仕事だけでは食べていけないのが現状です。この先、時代の変化に合わせてもっと仕事の幅を広げる必要性に迫られてもいます。自分を再教育することが必要なんですよね。英語を学んでアップデートしたいと思っていました。例えば、英語と写真を組み合わせた仕事ができるようになれたら……とか。

うちは妻がパートですがフルタイム同様に働いているので、フリーランスの僕はいわゆるイクメン。家事も育児もやってかなり大変でしたが、この春、下の男の子がやっと小学校に入学して、少し自分の時間を取れるようになりました。それで、本格的に英語を勉強し直したいと思ったんです。前の年に上智のビールの講座でオープンカレッジの楽しさを体験していたので、英語も大学の公開講座を探しました」

日常会話はできるけれど、文章を書くのが苦手。そこで、慶應義塾大学にあった上級クラスのライティングコースに通うことを決めた。

オンラインの大学講座は続かなかった

「実は以前、MOOCs(ムークス)(Massive Open Online Courses)の代表的プラットフォームであるCoursera(コーセラ)で、オンラインでアメリカの大学の授業を聴講したことがあるんです。でも、講義が一方通行だとモチベーションを保つのが難しくて、結局は続きませんでした。やはりちゃんと身につけたいなら、先生やクラスメイトと実際に会ってのやりとりは不可欠だと思うのです。その点、この講座は、論文の書き方レクチャー、宿題の添削、さらにはその内容についてクラスでの話し合いなど、先生と受講者のやりとりの中で成り立っています」

宿題は、与えられた課題について、翌週までに小論文を書くというもの。(1)Introduction(導入)、(2)Body(本文)、(3)Conclusion(結論)といった形でしっかり構成を立てて、書かなければならない。

「最初の宿題は『環境問題』がテーマでした。消費者として何ができるかのエッセイを1週間でまとめるというもの。ちゃんと構成を組み立てるには、まず書くことがいるので、材料を自分で探さなければなりません。英語で文章を書く場合、最初から英語で考えた方がいいから、そうすると材料も英語から探すことになります。そのリサーチにかなり時間がかかるんです。イギリスの新聞「ガーディアン」、アメリカの新聞「ニューヨークタイムズ」、アメリカの雑誌「タイム」などの記事を検索したり、関連文献をピックアップして整理したり…。何日もやって10時間以上はかけましたね」

フリーカメラマンの渡邉茂樹さん

フリーカメラマンの渡邉茂樹さん

自分を追い込んで勉強すると、脳から快感物質が!

渡邉さんは「毎回、宿題が大変!」と言いながら、かなり楽しんでいるように見える。

「仕事も好きだけど、“これを撮影してください” といわれて撮影して “はい撮れました” というのとは、別の快感が勉強で感じられるんですよね。脳から快感物質が出る感じ。難しい課題をクリアしていくのが楽しいんです。単位を取るための大学時代の勉強とは全然違う。しかも、次の授業までに、という縛りがあるからこそ、頑張れます。僕はそれがなければ、絶対に勉強できないですね。自分を追い込む状況を得られることが、お金を払って申し込んで受講する価値だと思います。

12回コース3万円なので、1回は2,500円。でも、授業以外にも勉強時間を与えられていると考えると安いと思います。前は夜、お酒を飲むことも多かったんですが、最近では眠くなっちゃうのが嫌で、以前ほど飲まなくなりましたね。勉強時間がなくなるのはもったいないです。

学生時代の勉強は単位を取るためのものでしたが、今は自分の『再教育』のため。この講座が終了したあとも、また次の講座を探して、勉強を続けていきたいと思っています。それこそ英語で寄稿ができるようになるとか、上は果てしなくあるので、勉強に終わりはないですね」

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文/まなナビ編集室 写真/渡邉茂樹

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