「中世日本紀」の世界
神奈川大学みなとみらいエクステンションセンター
KUポートスクエア
平沢卓也(早稲田大学日本宗教文化研究所招聘研究員)
-日本文化, 講義詳細
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大学
神奈川大学みなとみらいエクステンションセンター
概要
『日本書紀』は養老四年(720)に舎人親王らによって撰進された、編年体の史書です。全三十巻(系図一巻は散佚)のうち、最初の二巻は神代についての巻で、神々の世界が詳述されています。古代人の神観念を考える上で、最も重要な文献といっていいでしょう。『日本書紀』は成立後まもなく、朝廷において「日本紀講筵」とよばれる講書(書物を論じたり講義したりすること)が行われるなど、正史として重視されてきました。しかし、古代の律令制度が機能しなくなると、そうした行事も途絶えてしまいます。十世紀半ばには「日本紀講筵」は行われなくなり、公家や僧侶は、知識として神々の物語を知ってはいても、『日本書紀』自体を読む機会は失われていったのです。
しかし、平安末期から鎌倉時代にかけて、日本という国の始原や神々の来歴についての関心がたかまり、改めて『日本書紀』の神話に注目が集まります。諸書に「日本紀(日本書紀)に云わく」という形でその文章が引かれるようになるのです。ところが、そうした引用の中に『日本書紀』本文とは異なる、どこにも典拠がみいだせない不思議な説が少なからず現れるようになります。これらは、当時の世界観を背景に創出された、神話の新たな解釈であると考えられます。中世では、『日本書紀』の本文のみならず、それ以外の神話に関する諸説も「日本紀に云わく」として表記することが行われていたようなのです。更に『日本書紀』の註釈書も制作されますが、これも現代の註釈とは異なり、創造的解釈というべきものでした。こうした註釈=解釈には、中世人の宗教観が濃厚に反映しており、彼らの精神世界を探る上で貴重な資料といえましょう。現在、文学や思想史の研究では、このような中世独自の神話解釈を、「中世日本紀」と呼んでいます。
「中世日本紀」は、断片的で複雑な神話言説を捉えるためにつくられた学術的な概念ですが、それによって中世の神々の世界に対する理解が大きく進みました。
本講座では、このような状況をふまえ、中世における『日本書紀』の受容について、「中世日本紀」という視点から皆さんと一緒に考えてみたいと思います。
はじめに『日本書紀』自体の成立や内容を概観し、その後様々な「中世日本紀」文献を読みながら、中世人の精神世界を検討していきます。なお、講義では配付資料を用いますが、その際原文資料も取り上げていく予定です。そうした資料が初めての方でも分かりやすいよう丁寧に解説しながら進めますので、是非ご参加ください。
講座期間
2017/05/17~2017/05/31
講師名
平沢卓也(早稲田大学日本宗教文化研究所招聘研究員)
講師概要
1967 年東京都生まれ。國學院大學卒業。早稲田大学大学院文学研究科博士後期課程単位取得退学。専門は神道思想史、神仏習合史。論文に「山王の受戒――中古天台における神祇観の一斑」(『東洋の思想と宗教』22)、「〈和光同塵灌頂〉考」(伊藤聡編『中世神話と神祇・神道世界』竹林舎)、「変容する神仏関係――寛文・延宝期の伊勢神宮」(『説話文学研究』49)などがある。
住所
神奈川県横浜市西区みなとみらい2-3-1 クイーンズタワーA14階
アクセス
横浜高速鉄道みなとみらい線(東急東横線直通)「みなとみらい」駅より徒歩2分/JR根岸線・市営地下鉄「桜木町」駅より徒歩7分
日時の変更もありますので、開講情報は必ずこのページの大学HPからご確認ください。
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