毎週4時間、年28回でスーツを
フランス映画『仕立て屋の恋』を観た人は、テーラー=仕立て屋と聞いて、超几帳面で寡黙で、(向かいの家に住む女性の生活を覗き見する……など)なにやらイケナイ連想をしてしまうかもしれない……。私もこれまで高級テーラーとはまったく縁のない生活をしてきて(これからもだろうが)、テーラーのイメージはかなり偏ったものになっている。
俳優の渡部篤郎がとあるテレビ番組で、大のお気に入りというフルオーダーメイドのスーツに身を包み(もちろん靴も時計もスーツに見合う超高級品)、銀座の高級寿司店で食事をしていたのだが、そのいでたちは寸分のスキもなく、カッコよすぎて逆に引くというワケのわからない感情に陥ってしまったこともある。
文化服装学院のBUNKAファッション・オープンカレッジ「高級メンズ テーラー技術」は、紳士服製造一級技能士や現代の名工たちが一流の縫製技能を次世代に伝えたいと発起し、7年前に開講。土曜日の午後4時間、1年間28回に渡ってジャケット、スラックス、ベストなどの紳士服を完全ハンドメイドで制作するという、数ある講座の中でも難易度が高い、しかしディープな内容だ。2016年度の講座は30~50代の男女11人が受講し、それに対して講師は3人という超ぜいたくな体制で行われた。