肥満が美肌の大敵!? 分子栄養学が説く、その本質的理由

美肌を考える

東京農業大学の「分子栄養学で美しい肌を手に入れる」講座では、美しい肌を作るための障害となることが語られた(前の記事「美肌を追求するなら知っておきたい セラミドとヒアルロン酸の分子栄養学的基礎知識」)。なかでも興味を引いたのは肥満と美肌との知られざる関係。そこには「アディポネクチン」なるホルモンも関係しているらしい。

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肥満は肌の状態に悪影響を及ぼします

東京農業大学の「分子栄養学で美しい肌を手に入れる」講座では、美しい肌を作るための障害となることが語られた(前の記事「美肌を追求するなら知っておきたい セラミドとヒアルロン酸の分子栄養学的基礎知識」)。なかでも興味を引いたのは肥満と美肌との知られざる関係。そこには「アディポネクチン」なるホルモンも関係しているらしい。

太っていると、皮膚のバリア機能が低下する!?

肥満は肌の状態に悪影響を及ぼします」と講師の山根拓実先生(東京農業大学応用生物科学部助教)。え、でも太っている人って、お肌パンパンでツヤツヤしていないですか……?

「それは、皮膚が脂肪で張っているからそう見えるのだけだと思います。内部では乾燥が進んでいるんですよ」(山根先生)とのこと。いったいどういうこと?

「脂質摂取量と水分蒸発量の関連を調べてみたところ、脂質を取り過ぎると、水分蒸発量が上がっていることがわかりました。つまり皮膚のバリア機能の低下を引き起こしているんです」(山根先生)

脂質を取り過ぎると、肥満にもなる。そこで、BMIと水分蒸発量の関連を調べてみると、やはりBMI値が上がるほど、水分蒸発量が増えているという。

つまり、脂質を取り過ぎると皮膚のバリア機能が低下し、皮膚のバリア機能が低下することで水分が蒸発していく、というのである。太っていてパンパンテカテカしているお肌は、じつは美肌ではないらしい。

ちなみにBMIとは、肥満を表す指標。身長×身長で出た数字で体重を割ることで算出される。記者は身長162cm、体重50kgなので、
1.62×1.62=2.6244(cmではなくmで計算する)
50÷2.6244=19.0519….

BMI値は19だ。18未満はやせ、18〜25以下は標準、25以上は肥満なので、筆者はとりあえず標準に入るようだ。

肥満になると皮膚のバリア機能が低下するのには、「アディポネクチン」というホルモンが大いに関係しているという。

〇〇の多い食事をとるとアディポネクチンが減る

アディポネクチンは、体の脂肪細胞から分泌される善玉ホルモンだ。今まで、糖尿病や高血圧、脂質代謝異常を予防することで知られていたが、山根先生によれば、近年、皮膚中のコラーゲンやヒアルロン酸を増加させることがわかってきたという。

「アディポネクチンの血中濃度は、やせている人ほど高く、肥満の人ほど低いことがわかっています。つまり、脂質の多い食事を取ると、血中のアディポネクチン値が低下します。アディポネクチン値が低下すると、コラーゲン、ヒアルロン酸、セラミドといった肌を構成している物質が減少し、結果として肌のハリや弾力、保湿性やバリア機能が低下するんです」(山根先生)

人体の仕組みはとても複雑なので、アディポネクチンひとつですべてが語れるわけではないと山根先生は言うが、その量が美肌に影響するのであれば、多いに越したことはない。

アディポネクチンを増やす赤ワイン、青魚、食用菊

ぜひ知りたいのが、アディポネクチンを増やす要因、減らす要因。

アディポネクチンを増やすには、適切な体重の維持、適度な運動、そして、アディポネクチンを増やす作用のあるとされる食品を取ることが必要だそうだ。たとえば、レスベラトールを含む赤ワイン、DHAやEPAを含む青魚、食用菊などもアディポネクチンを増やす作用のある食品だという。

逆に減少させる要因は次の3つ。先に述べた脂質の過剰摂取、喫煙、そして睡眠不足だ。

「皮膚の深部にある脂肪組織には、いくつかの役割があります。衝撃に対するクッションとして、体温の保持のため(肥満の人が汗をかきやすいのはこのため)、そしてホルモンや酵素を分泌することです。さらにホルモンは、栄養(肥満)状態によって分泌される量や種類が異なることがわかってきました」(山根先生)

アディポネクチンも、この脂肪組織から分泌される。そして脂肪重量が増えると、アディポネクチンの分泌量は減り、MMP(マトリックスメタロプロテアーゼ)という物質が放出されるという。これは皮膚機能を低下させるのだそう。

つまり肥満になると、“美肌” ホルモンともいえそうなアディポネクチンが減り、さらに “汚肌” をつくるMMPが作られるのである。肥満を抑制することこそが、皮膚機能を改善するキーであることがよくわかる。

動物性脂肪の摂取量が増加すると……

どんな高級コスメよりも和食が美肌への早道?

どんな高級コスメよりも和食が美肌への早道?

さらに山根先生は、抗肥満作用のあるとされる食品を紹介してくれた。

「抗肥満作用があるとされている食品は、緑茶(カテキン)、大豆(βコングリシニン)、みかん(β-クリプトキサンチン)などです」

すべて古くから日本で食べられてきた食材ばかりではないか。戦後、食の欧米化などにより日本人の動物性脂肪摂取量と総脂肪量は大幅に増えた。我々はどんどんと美肌を損なってしまっているのである。

アディポネクチンを増やす食用菊や青魚と、肥満を防ぐ緑茶にみかん、それに加えてお肌によいというグルコシドセラミド(前の記事「美肌を追求するなら知っておきたい セラミドとヒアルロン酸の分子栄養学的基礎知識」参照)を多く含む麦や米、大豆、トウモロコシが講座で紹介された美肌最強食材。これは、どうみても和食ではないか。もしかしてどんな高級コスメよりも和食が美肌への早道?

記者が翌日から朝食を和食に切り替えたのは言うまでもない。

山根拓実先生

◆取材講座:「分子栄養学で美しい肌を手に入れる」(東京農業大学オープンカレッジ)

文/和久井香菜子 写真/和久井香菜子、(c)sunabesyou、(c)taa22 / fotolia

-講座レポート

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