1年にもわたる即位儀式
国士舘生涯学習センターで開催された公開講座「皇位継承とさまざまな儀式」で、宮中祭祀に詳しい国士舘大学教授の藤森馨先生は、簡単に「即位」と言っても、そこには実に様々な儀式が存在するという。
「数々ある儀式のなかでも、まず重要なのが『剣璽等承継の儀(けんじとうしょうけいのぎ)』。これは、天皇陛下が皇位を継承された際に、三種の神器である剣璽を先帝から譲りうけるというものです。三種の神器の継承は、正当な天皇の後継者としての証ゆえ、絶対に欠かせません。ちなみに、特別な参拝のときには、剣璽が御動座(ごどうざ 御座所を移すこと)されることもあります。2014年の天皇陛下の伊勢神宮ご参拝のときにも、天皇陛下と一緒に侍従などが剣璽を持ち、お供していました」
なお、この儀式が始まったのは、桓武(かんむ)天皇(781年に即位)の皇太子であり、第51代天皇となる平城(へいぜい)天皇(806年に即位)の時代から。
「桓武天皇の崩御で、皇太子であった安殿親王(あてのみこ)が天皇に即位するにあたり、この『剣璽等承継の儀』が行われました。新天皇が即位するにあたっては、『天皇の位を受け継ぐ“践祚(せんそ)”』と、『天皇の位につく“即位”』という過程を経なければなりません。『剣璽等承継の儀』は、この『践祚』にはなくてはならない儀式なんです」
桓武天皇以前は、践祚と即位に区別はなかった。だが、平城天皇以降は、両者の間は明確に区別されるようになったという。「践祚」の後には、天皇の位に就いたことを三権の長以下に宣下する「即位後朝見(ちょうけん)の儀」や、内外への宣下となる「即位の礼」や「大嘗祭(だいじょうさい)」が行われ、初めて「即位」が完了する。なお、現代では、前天皇が崩御後直ちに践祚が行われ、喪明け後に即位の儀式の準備が行われることになっている。
即位にあたっては、最も有名な即位の儀式である「大嘗祭(だいじょうさい)」など、数多くの儀式が控えている。(詳しくは、宮内庁HP(コチラ)を参照)
「新・天皇陛下だけでなく、上皇の譲国の儀式なども行われます。すべての儀式を完了するまでには、最低でも1年。新天皇は夜を徹して行われる儀式も多く、我々一般人から考えても、かなり体力的に厳しいものが続くと予想されます」と藤森先生は語る。
◆取材講座:「皇位継承とさまざまな儀式」(国士舘大学生涯学習センター世田谷キャンパス)
文・写真/藤村はるな