下着姿で外へ出てはいけない
「東京五輪当時、1ドルは360円でした。1964年は外交・留学・商用以外の一般人へのパスポート交付が始まった年でもあります。当時の一般の人々は外国人と接することも極端に少なかったので、東京五輪のために94か国から選手がやってきた1964年は、日本にとって第2の開国だと思うのです。
国際的なマナーが広まったのも、東京五輪からです。五輪を前に、『立ちションベンをしてはいけない』、『列に横入りしてはいけない』、『唾を吐いてはいけない』、『下着姿で外へ出てはいけない』などが広く呼びかけられるほど、日本のマナー、当時はエチケットと呼んでいましたが、よくありませんでしたから(苦笑)。
そして何より、閉会式のあの光景。私たちは戦争を知らない世代と言われていましたが、親から戦争の話を聞いて育った世代です。敗戦国日本を、各国の選手たちが、世界が認めてくれた。うれしかったです。
2020年の東京五輪は205ヵ国の方々が日本にやってくる。真のグローバル化を促進する第3の開国になると思いますし、そうあらねばならないと思っています。日本が多様性を受け入れるグローバル社会になっていくことが、ホスト国として、第3の開国を実現させるチャンスだと思うのです」
あの閉会式から53年。教鞭をふるうほかにオリンピック招致にかかわり、IWGA(国際ワールドゲームズ)理事を務める師岡先生だが、世界に対する興味関心が芽生えたきっかけは「間違いなく1964年の東京五輪」と断言する。
「お話も面白いが、熱い人柄がすばらしい」
受講生は口をそろえて言う。そして、師岡先生の講義のお楽しみはそれだけに終わらない。
「毎回講義後に、懇親会を行うんですよ。みんな名刺交換して、情報交換。講義には出られなくても親睦会には来るという人もいて(苦笑)。親睦会は皆勤賞という人もいるんですよ(笑い)」
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取材講座データ | ||
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オリ・パラ、ラグビー、マスターズ支援基礎教養講座 | 上智大学公開講座 | 2016年11月7日~2017年1月30日 |
2017年1月23日取材
文・写真/まなナビ編集室