健康寿命を延ばすには口の機能が大切
日本人の平均寿命は女性87.14才、男性80.98才。しかし健康寿命は女性75.56才、男性71.11才。そこには約10年の開きがある。この人生最後の10年を健康に過ごすには、しっかり栄養を取り、適度な運動をし、社会と交流を持ち続けることが大切だ。その時にとても大事なのが、口の機能を健康に保つことだという。
なぜなら、口にはさまざまな機能があるからだ。
・食べる
・話す
・呼吸する
・表情をつくる
これらをスムーズに行うには、歯(入れ歯やインプラント含め)があって、しっかり噛めて、虫歯や歯周病などがきちんと治療され、口の中が唾液でうるおっていることが必要だという。
なぜ唾液が大切なのか
高齢になると唾液の分泌量は減る。原因は主にふたつあり、ひとつは、加齢により唾液腺からの分泌物は少なくなるためである。もうひとつは、高齢者は多種の服薬をしていることが多いが、薬は分泌を抑制する方向にはたらく事があるためである。つまり加齢と服薬のW効果で、どうしても高齢者の唾液の分泌が減るのである。
では、なぜ唾液が減ると困るのだろうか。
唾液にはさまざまな作用がある。口の中を潤して発音をスムーズにしたり、虫歯を予防したり、歯の再石灰化を助けたり、口中の食べかすや菌を洗い流したりする。もちろん、消化を助けたり口の粘膜を保護したりもする。
唾液が減ってしまうと、虫歯や歯周病になりやすくなるだけでなく、入れ歯が入れにくくなったり、食べ物が飲み込みにくくなったり、話しにくくもなる。つまり、口の中の清潔を保てなくなり、栄養が取れなくなり、ほかの人と交流もしにくくなるのである。
唾液腺を刺激して唾液を出そう
年齢とともに減る唾液だが、唾液腺をマッサージすることで、その分泌を促進することができるという。
唾液腺には、耳下腺(じかせん)、顎下腺(がっかせん)、舌下腺(ぜっかせん)がある。
耳下腺は両耳の少し手前にあるので、そこを両手指で後ろから前に向かって、円を描くようにマッサージする。
顎下腺は顎の骨の内側の柔らかい部分にあるので、耳の下から顎の下まで5か所くらいを順番に押すようにマッサージする。
舌下腺は顎の真下にあるので、両手の親指で顎の真下から舌を突き上げるように押す。
このような唾液腺マッサージをすることで、唾液腺が刺激されて唾液の分泌が増すという。
食事前には健口体操も
高齢者にとって、飲み込み機能の低下は誤嚥(ごえん)にもつながる重大な問題だ。口だけではなく、首にも飲み込みに関係する筋肉があるため、食事前には、口や首の筋肉をほぐして機能を改善するための「健口体操」をするとよい。
「健口体操」で検索すると、実際の実施動画などがたくさん出てくるので、ぜひ見てほしい。また、実際に歯科医院で教えてもらうのもよいだろう。
◆取材講座:「暮らしと健康~お口の健康~」(昭和大学歯科病院)
取材・文/まなナビ編集室 医療・健康問題取材チーム