転びそうで転ばなかった話をするのが女、転んだ話をするのが男

男脳と女脳

女性部下となんかうまくいかない、という男性リーダーは多いだろう。最近は女性の上司が男性部下の扱いに悩むケースも増えてきている。ちょっとした言動からなんかぎくしゃくしてくる……男女間ではそういうことが起こりやすい。最新の脳科学や心理学の知見がヒントになることもある。今回は、男女間の誤解やすれ違いを生む、脳差について考える。

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女性部下となんかうまくいかない、という男性リーダーは多いだろう。最近は女性の上司が男性部下の扱いに悩むケースも増えてきている。ちょっとした言動からなんかぎくしゃくしてくる……男女間ではそういうことが起こりやすい。最新の脳科学や心理学の知見がヒントになることもある。今回は、男女間の誤解やすれ違いを生む、脳差について考える。

「階段でつまずいて落ちそうになっちゃったんですー」

あなたはどちらに共感するだろうか。

新人の女性社員が朝出社して、
「さっき階段でつまずいて落ちそうになっちゃったんです。怖かったー」
と声をあげる。周りの女性社員は、「大丈夫だった? 怖かったでしょう、気を付けないと……」と声をかけている。

すると、リーダーの男性社員が一言。
「で、何段落ちたの?」

女性社員は横を向き、
「え、落ちてませんけど……」
と、しらーっとした雰囲気に。

これ、職場でよくある話である。これは男性脳、女性脳のひとつの典型だという。

女性を理解するキーワードは“共感”

明治大学リバティアカデミーの公開講座「男女脳差理解と感性マーケティング」で講師を務める感性リサーチ代表取締役社長・黒川伊保子氏は、「男女の脳は全く別の装置なのです」と言う。黒川氏はAI(人工知能)の研究の過程で、男性脳と女性脳ではあらゆる領域で大きな違いがあることに気づいたという。

人間には個人差があるので、男性でも女性脳型の人がいるし、女性にも男性脳型の人もいる。これはあくまでも“群”として見た時の分析である。

その一例が、”共感”の違いだ。

上の話で男性リーダーが「で、何段落ちたの?」と訊いたのは、追加情報を求めただけのことだ。男性脳型にとって「転びそうになって転ばなかった話」は情報量ゼロの話題であり、「それに何の意味があるの?」というのは男性脳型の典型的な反応だ。

しかし女性脳型は「結果として転んだかどうか」は問題ではない。共感するかしないか、なのだ。さらにこれをきっかけに、「先がとがった靴は転びやすいよね」「私も高いヒールでこの前怖い思いをした―」などと井戸端会議にまで発展していく。

“共感”した情報はしっかりデータベースに保存

このような女性能型に特有の“共感”は、子供を身ごもり育てる性として、哺乳類の長い歴史の中で獲得してきたものだという。自分の身や子供の身を危険から避けるためには、情報は多ければ多い方がいい。“共感”もその情報のひとつなのだ。

さらに、情報として受け取るだけでなく、共感して感情として採り入れ強く記憶することで、自分が同じ状況に陥ったとき素早く対処することができる。つまりリスクのデータベースが形作られるのである。

実際、新人社員から「怖かった」話を聞いたほかの女性たちは、無意識のうちに階段では手すりのそばを歩くようになるという。

男女脳の理解から職場関係も円滑に

また、“共感”される側も、怖かった思いを話し受け入れてもらうことで、脳がリセットされる。このように「共感は、女性脳にとって脳を正常に走らせるために大事なハンドリング」(黒川先生)なのだという。一見、たわいもないものに見えるものも、生産性をアップさせるために必要なものとなることがあるのだ。

職場の人間関係はちょっとした誤解やすれ違いから悪化する。“共感”にもこのようなメリットがあることを学べば、男性の「また女性がたわいもない話題で盛り上がってるよ」という見方も、女性の「本当に男はわかってない」という見方も、変わるのではないだろうか。

◆取材講座:「男女脳差理解と感性マーケティング」(明治大学リバティアカデミー)
文/まなナビ編集室 写真/(c)chombosan/fotolia

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