竹宮惠子氏講演「焚き付けにした少年探偵団マンガ」

マンガはなぜ人を惹きつけるのか(その2)@明治大学リバティアカデミー

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西谷祥子先生からの連絡

私にとってマンガとは「愛さなくてはならないもの」でした。「マンガが好き」などと言うと、「は? マンガは子供が読むものでしょ」「トイレの落書きと一緒じゃない」と返され、とても「マンガ家になりたい」などと言えるような雰囲気ではありませんでした。

当時の大人はマンガと聞くと必ず否定してくるので、かえって「私はマンガが好きなのです」「何があってもマンガの見方をするのです」と自分で固く決めなければならなかったのです。私はマンガが大好きだし、マンガが力を持つ存在になっていくことを信じていました。

ついに私は高校の進路相談で、担任の先生に「じつはマンガ家になりたい」と告げました。その一言をいうのに、私はどれだけ自分を鼓舞しなければならなかったでしょう。ところが、先生は頭ごなしに否定することなく、「その若さで将来を決められることは素晴らしい」とほめてくださいました。担任は古文の先生で、私がクラスに置いてあるノートに書き続けていた童話を全て読んでくれていて「とても面白いので児童文学作家になればいいのに」とも言われましたが、私は「いえ、児童文学ではなくマンガなんです。マンガ家は16歳でデビューする人もいるので焦っています」と話しました。

実際このとき里中満智子さんが16歳でデビューをしていました。私は里中さんと同じ時期に投稿していましたが、里中さんは入選で、私は「もっと頑張りましょう」。自分でもその能力の差はよくわかっていましたから、やみくもに投稿するのではなく、実力をつけてからしかるべきところで投稿しようと思うようになっていました。自分に対する社会の評価を客観的に見られるようになってきたのだと思います。

高校3年の10月くらいに、石森先生のお仲間で少女マンガ家の西谷祥子さんから作品の応募をしませんか、という連絡をいただきました。西谷さんを担当している編集者の方が「どうやら竹宮惠子という人は西谷作品が好きなようだから、本人から話をすれば応募するだろう」と考えて連絡をさせたようでした。実際にマンガを連載しているプロからそのような連絡がきたことは、当時の私にとって衝撃的で光栄なことでした。

それで、『マーガレット』に投稿する作品を描くために徹夜をして、人生で初めて翌日の授業をフケました。それまでは母親の手前もあって授業をサボるなんてことは全くなかったのですが、このときばかりはもうどうしようもなかったのです。

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