私たちの目で起きていること─視覚は化学反応

サイエンスカフェ「タンパク質の不思議への挑戦」@大阪大学総合学術博物館

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ところで人間はビタミンAが欠乏すると、暗いところでものがよく見えなくなる「夜盲症」になる。これは、レチナールがビタミンAから作られるためだ。ビタミンAが不足すると、レチナールが作られなくなるため、光を感知出来なくなるというのだ。病気も化学反応が原因という話に、受講生は誰もが化学のおもしろさを実感したようだった。

赤い丸を10秒見つめると……

さて、光の次は色だ。色を感じる物質は色覚視物質といい、人間は主に3種類の色覚視物質を持っている。主に青色を吸収するもの、緑色を吸収するもの、赤色を吸収するものの3つだ。

講義ではここでひとつの実験が行われた。スライドに赤い丸が描かれており、それを10秒間見つめるように指示される。

白地に赤丸

その後、真っ白いスクリーンを見てみると……。

白地

白い画像の中に、ぼんやりと青っぽい丸が見えただろうか。

これは、赤い光ばかりを見続けたことにより、赤色を吸収する色覚視物質ばかりが反応し、色の認識のバランスが崩れるために、このように見えるらしい。ネットなどでこうした目の錯覚ネタが紹介されているが、これらも化学反応によって起きているとは……! 

ちなみに、女性の中には、色覚視物質を4種類持っている人がたまにいて、そういう人は通常より多くの色を識別出来るらしい。

では人間以外の動物はどうか。たとえばウシの場合はタンパク質の種類が少なく、そのため色を識別できないという。え!? ということは、つまり闘牛士が振っている赤いマントは何のため? じつは赤色で興奮しているのは、ウシではなく人間のほうだという……。

赤色で興奮しているのは、ウシではなく人間のほう

人体の仕組みも突き詰めていくと、授業で習ったような化学式にたどり着く。今まで、単なる数式や記号だと思っていた化学が、突然身近に感じられる。こうした体験によって、化学の道を選ぶ子どもや中高生が出てくるなら、それこそ、サイエンス・カフェの本懐ではないだろうか。

〔大学のココイチ〕マチカネワニ。大阪大学豊中キャンパスから出土したワニの化石。日本で発見されたワニの化石第一号で、ワニの中では大型だとか。博物館入り口にドドンと構えている。

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取材講座データ
サイエンスカフェ「タンパク質の不思議への挑戦」 大阪大学総合学術博物館 2017年春講座

文/和久井香菜子 写真/まなナビ編集部、(c)koti、(c)Tilio & Paolo / fotolia

〔関連施設〕 大阪大学総合学術博物館

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