禁煙したくてもできない心を変えていく情報ナッジ戦略とは

行動経済学を考える@立命館土曜講座

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放置自転車に頭を悩ませていた京都市がとった策とは

放置自転車に頭を悩ませていた京都市がとった策とは

依田先生は一つの質問を投げかけた。

喫煙者に禁煙を訴えるのに、タバコのパッケージに真っ黒な肺を印刷するのと、タバコを値上げするのと、どちらが効果的だと思いますか?

タバコを値上げするのは “お金” に訴える、いわば価格政策だ。即効性はないが継続的な効果がある。一方、真っ黒な肺をパッケージに印刷するのは、“情報” を与えること。こちらは即効性がある。

“情報” で人間の “ココロ” にうまく呼びかけ、望ましい方向を選択させていく戦略のことを、行動経済学では “情報ナッジ” と呼ぶ。“ナッジ” とは nudge。ヒジで軽くつついたり押したりすることを意味する英語だ。

勉強しなければならないけどマンガを読みたい “ココロ”の癖

そこで考えた。近年、国内外のホテルに泊まると、このような表示をよく見る。「2泊以上ご宿泊のお客様へ。シーツの洗濯に〇〇リットルの水が使われています」。思わず地球のためにシーツの交換をやめようと考える人も多いだろう。

こういうニュースをネットで見たこともある。放置自転車に頭を悩ませていた京都市が、それまで「駐輪禁止」とあった看板を「自転車捨て場」という看板にしてみたら、放置自転車がいっきになくなったというのだ。

これらもひょっとして “情報ナッジ” 戦略だったのだろうか。そう考えると、身の回りに “情報ナッジ”はたくさん存在するのかもしれない。

依田先生は講座の最後にこう言った

「リスクは承知しているけれどもタバコの一服どうしようかな……、受験勉強をしなければならないけれどマンガを読みたいな……など、“ココロ” の癖は誰にもある。それに自分で気づいて理解し、納得のいく人生を送ること。また、そういった “ココロ” の癖を理解して、“情報ナッジ” 戦略で人々に正しい選択をさせること。それが行動経済学の意義です」

◆取材講座:「『ココロ』の経済学─行動経済学から読み解く人間のふしぎ」(立命館大学土曜講座 第3198回)

取材・文/まなナビ編集室 写真/まなナビ編集室、fotolia

 

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