食前と食間、どちらがよい?
今春、武蔵野大学薬学部教授を退任した油田先生は、かつて漢方製剤で知られる㈱ツムラで常務取締役研究本部長を務めた経験ももつ、生薬のスペシャリストだ。
漢方薬は、食前あるいは食間(食事と食事の間)に飲むものとされている。では食前と食間、どちらがよいのでしょうか。
「本来は食間に飲むのが一番よいとされています。しかし、実際に血中濃度などを調べてみると、それほど大きな違いがあるわけではありません。それより、決められた回数、きちんと飲むほうがよいでしょう。もし食前に飲み忘れたら、食後でもすぐに飲んでしまうほうがよいです」(油田先生。「 」内以下同)
飲むときはお湯と水、どちらがよいのでしょうか?
「葛根湯のように発汗作用を期待して飲むものは、暖かいお湯の方が効果があがるでしょう。しかしそうでないものは、湯で飲んでも水で飲んでも大きな違いはありません」
飲んだ後、いまいち効きが悪いと思ったら?
飲んだけれども、いまいち効かないなあと思うことがあります。そんな時はどうすれば?
「処方箋なしでも買える市販薬(一般用医薬品、OTC医薬品)の場合は、効きが悪いなと思ったら、もう一服飲んでも大丈夫です。一般用医薬品は、有効成分を処方箋薬の2分の1以上含まれなければいけないことになっているので、ぎりぎり2分の1の場合が多いんです」
漢方薬は副作用はないのですか?
「副作用はほとんどないことが多いです。ただし体質によっては人参(高麗人参)で血圧が上がる人もいますし、甘草なども血圧を上げる作用を持っています。もちろん高血圧に効く薬もありますので、血圧高めの人は薬局に相談したほうがよいでしょう。
また、中国で売られている生薬製剤(中薬)の中には、日本では用いられない毒性のあるものを使用したものもあります。
たとえば、木通(もくつう)は日本でも使われている原料で安全なものですが、よく似た関木通(かんもくつう)はなどは有害成分であるアリストロキア酸を含み、中国では長期服用者に腎障害が出た例もあります。こうした例はけっして少なくはないのです」
◆取材講座:「知っておきたい漢方いろは」(武蔵野大学三鷹サテライト教室)
文/まなナビ編集室 写真/(c)leungchopan / fotolia