毒を出す、取り込む。樹木の防衛術のすさまじさ

樹木の形を読みとく(その3)@東京農業大学オープンカレッジ

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樹液に集まるカブトムシ

樹液に集まるカブトムシ

樹皮の厚いものほど美味しく、樹皮が薄いものほどまずい?

樹皮が薄いほうが、カブトムシが樹液を吸うのに都合よいのではと思うでしょう? それが違うんです。サルスベリにカブトムシはつかない。樹液が渋くまずいからです。なぜならサルスベリのようなコルクが薄い木の樹液にはフェノールやタンニンが多く含まれているから。クヌギやコナラのようにコルク質が厚ければ厚いほど、防御物質を混ぜる必要がないから樹液が甘いのです

たしかに、植物は基本的に有毒だと思えというのはよく聞く話である。テレビなどでも時々、ニラと水仙の葉をとり違えたり、シソの葉と紫陽花の葉を間違えたりして食中毒が起きたといったニュースが報道されている。人間が食べるように改良された作物は別として、そうではない野草や園芸植物には、思いもよらない危険が潜んでいるのだ。

そして、樹皮の防御機能はこれだけではない。樹皮を厚くしたり、毒性物質をもつだけでなく、もっと積極的に抵抗することもあるというのである。

樹木は異物を飲み込もうとする

堀先生が次に、スライドで見せた樹木の幹の写真は、ものすごく奇妙なものだった。まるでバゲットをグルグルらせん状にねじったかのような……。

樹木の幹
つる性植物を取り込んだ枝

これは、もともとは木の枝に、つる性植物が巻きついたものです。樹木は、自分に昆虫やつる性植物などが接触してくると、“異物だ”と認識します。そして最初は、接触する部分の材の肥大成長を早めて異物を押しやろうとします。しかし異物がなおも離れないと、今度は飲み込んで、自分の内部に取り込もうとするのです。こういった現象を“接触成長”といいます

つる性植物が枝についたので、最初、木はつるを押しのけようと枝を太くしたのだが、つるはつるで、それに負けじとますます巻きつき締めつけるものだから、木のほうはさらに肥大してつるを羽交い絞めにして取り込もうとした結果、つると木が一体化してしまったのだという。

恐ろしい! そこで思い出した。世界遺産にもなっているタイ・アユタヤの寺院ワット・プラ・マハタートで見た、仏頭が幹の中にはめ込まれた菩提樹のことを。幹の根元に仏頭が、絶対に取り外せないくらい、しっかりと埋め込まれているのだが、これは人為的なものではなく、木が長い年月をかけて取り込んだものだといわれている。堀先生によれば、木は接触してくるものは何でも取り込むという。旗竿を取り込んだり、パイプを取り込んだり。それだけ樹木というのは、“接触”に敏感なのだ。

寺院ワット・プラ・マハタートの菩提樹

寺院ワット・プラ・マハタートの菩提樹

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