フィギュアスケート人気も手伝って?
ロシア語初心者を対象としたこの公開講座。テキストに『ゼロから始めるロシア語・文法中心』(長野俊一著、三修社、2005年)を用い、ゼロからロシア語文法を学ぶ。講師を務める阿出川修嘉(あでがわのぶよし)先生によると、ここ数年、上智大学の公開講座をはじめ、社会人向けのロシア語講座の人気は高まっているという。
「私は2010年頃から社会人向けロシア語講座の講師を勤めていますが、当時に比べ、ここ数年はありがたいことに定員がすぐに埋まるようになりました。他大学主催の公開講座でも同様の状況のようです。残念なのは、その人気が社会人限定であること。現役大学生にとってロシア語は、ほかの外国語に比べてまだまだ認知度が低いようです」
ロシア語を学ぶ理由は仕事から文化、スポーツまで、千差万別だ。
「仕事で使われる方、ロシア旅行に行きたいという方、それから、ロシア人と結婚された方もいらっしゃいます。ロシアの可愛いものが好きだからという方もいます。数年前にマトリョーシカ人形が少し流行った影響でしょうか。また、最近のフィギュアスケート人気からか、ロシア選手のファンだからロシア語を勉強したいという方もいらっしゃいます」
初めて東ヨーロッパで開催されるサッカーワールドカップ
たしかに、女子フィギュアのトップ選手にはエフゲニア・メドベデワ、アンナ・ポゴリラヤ、エレーナ・ラジオノワと、ロシア選手がずらり。男子フィギュアでは、羽生結弦の憧れのスケーターであり、今春引退を表明した、トリノ五輪金メダリストのエフゲニー・プルシェンコが日本でも根強い人気を誇っている。まさにスケート選手熱がロシア語業界にも押し寄せているのだろうか。
とはいえ、まだまだ“ブーム”と言えるほどではないと阿出川先生は話す。その背景には、日本にとって “近くて遠い” ロシアという国の歴史が関係しているようだ。
「ロシアに対するイメージって、世代によって全然違うんです。冷戦時代の印象が強い世代にとっては、いまだソ連=〈共産国〉のイメージが強く、欧米に比べて遠い国。対して、冷戦を知らない大学生くらいの若い世代は逆に、「イメージらしいイメージがない」と言います。イメージが定まらないがゆえに、ロシア語もなかなかブームになりにくいのかもしれない。
今までもロシア語ブームが来そうになると、他の言語にもっていかれる、ということが何度かありました。韓流ブームが来て韓国語へ、とか、中国語へ、とか。そろそろロシア語ブームが来てほしいなと思っているんですが(笑)
来年2018年には、サッカーのワールドカップがロシアで開かれます。初めて東ヨーロッパで開催されるワールドカップとして大きな注目を集めるでしょう。こうした大きなイベントはブームを作る牽引力になりますね。ワールドカップに絶対行くんだ! という受講生もいらっしゃいましたよ」